あるスキャンダルの覚え書き
[いぬのえいがひょう] vol.001
あるスキャンダルの覚え書き (2006) Notes on a Scandal
老教師バーバラは、既婚の新任美女教師シーバが生徒と性関係を持っていることを知る。シーバの弱みにつけ込んで、自分と仲良くなるように脅すバーバラ。
これは性的欲望ではなく友情だと押しつける。あくまでも友情として自分を一番大切に思えと。
バーバラの行動は「おそろしいもの」と描かれ、終盤の演出はまるでホラー映画のよう。
シーバの行動は、「不貞」と名付けられるもの。自分の行動を「不貞」なものと認識したシーバは、はじめからバーバラに対して弱みを持ってしまう。
バーバラの行動は、友情とも恋愛とも執着とも確定しがたい。善意も悪意も入り交じったその関係をまとめて一言で言い表す言葉はない。とりあえずバーバラ自身はシーバとの関係性を「友情」と名づけ、それを絶対的に守るものと信じる。
シーバに向けた気持ちを、この部分は嫉妬、この部分は性的欲求、この部分は支配欲、この部分は憐憫、などと細かく定義せず、すべてを「友情」で片づける。シーバとの関係性を丁寧に掘り下げない怠慢さが、バーバラの、自己の行動を正当化する歪みの中心に思えた。
バーバラがシーバへの性的な欲望を抱いていることは、はっきりしている。
「友情」のカテゴリー名のもとにいくらでも強引な行動をとるバーバラなのに、性的なアプローチに関しては、シーバがほんの少し拒否しただけで諦める。
バーバラにとってシーバとの関係はあくまでも「ヘテロ女性同士の友情」なので、自身をレズビアンとは決して認められない。それで、そこだけ簡単に諦めたのでしょう。
フォビア度の高い(自身に対しても)クローゼットなかたを、的確に描写していると思う。
自分の欲望とちゃんと向き合わず、社会的に望ましい友情という関係性の枠にあてはめる。
けれども、その熱情は、友情の狭い枠になど入りきらない。ゆえに病的になってしまう。
うん。確かに病的。
だけど、こういうの、男たちはよくやってるよね。ヘテロ男同士の友情ってこうだよね。
肩を組んで酒を飲み交わして語り最優先でつき合う。
最愛と言っているはずの女には秘密を持つくせに、親友の男には秘密を持たない。
男同士がそのような関係を持つことは社会的に許されているから、病的とはされない。
バーバラは、男に生まれれば良かったね。
そうすれば、他者と、べったり執着しあう友情を押しつけあうこともできただろうに。
教師と生徒の、既婚者の非配偶者との性行為、というだけではなくて、若い男を貪るのは蔑むべきふしだらな異常行動であると社会が女に設定している点で、シーバの行為は「スキャンダル」と扱われたのではないかしら。
男は、若い女を貪っても非難されないものね。
シーバも、男に生まれれば良かったね。
そうすれば、異常と扱われずに存分に異常行動をとれたのに。
そう、この映画で描かれるバーバラの、ホラーじみた演出で恐ろしく描かれる不道徳行為やシーバの不貞行為は、なんのことはない、現実の大勢のヘテロ男は当たり前に行っていることだった。
なあんだ、よくあることね。なら、こわくないや。こわくないったら、こわくないもーん。
ところで! そんなことより、いぬかわいいよー! いぬってすてき! わんわん!
***
あるスキャンダルの覚書 NOTES ON A SCANDAL 公式サイト
イギリス/2006年/92分
監督:リチャード・エアー(『アイリス(01)』)
主演:ケイト・ブランシェット(『ヴェロニカ・ゲリン(04)』『ミッシング(03)』)
ジュディ・デンチ(『眺めのいい部屋(86)』『プライドと偏見(05)』『アイリス(01)』)
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