【韓国】10代のレズビアンを知る

「韓国レズビアンネットワークに学ぶ!」トークイベント レポート
『OUT ホモフォビアを叩きのめす!プロジェクト』をひっさげ、山形国際ドキュメンタリー映画祭のため来日した「WOM(ウム)」を、デルタGが赤字覚悟で東京に呼んだ。2007年10月11日(木)に新宿2丁目のコミュニティセンターaktaで開催したイベントには、約40人の参加者でいっぱいになった。
フェミニスト・ビデオ・アクティビズムWOMは、韓国の10代のレズビアンたちを撮影したドキュメンタリー映画『OUT:ホモフォビアを叩きのめす!プロジェクト』を2007年に制作し、山形国際ドキュメンタリー映画祭(2007年10月4日~11日開催)に出品・来日した。(WOMについては前掲の記事を参照)
コミュニティセンターaktaで行われた11日のイベントでは映画の上映はできなかったが、韓国におけるレズビアンの状況について、WOMメンバーからの報告と参加者との質疑応答を通して知ることができた。
◆どのようにして10代のレズビアンと交流するように?
2005年に韓国で開催された「人権映画祭」において、10代をテーマにした作品に助成金が下りるという情報を得た。WOMのメンバーは10代のレズビアンがどのように生きているのか興味を持っていたので、そのテーマで制作しようと決めた。
韓国では国策によってIT化が進められ、オンラインコミュニティの発展も著しい。WOMはそのオンラインコミュニティを通じて10代のレズビアンである女の子たちと出会う。そのとき初めて「異般検閲」という言葉を聞いた。「異般(イーバン)」とは「一般」という言葉に対して作られた言葉で「普通ではない」という意味を持つ。イ・ヨンさんは「学校の中で人権侵害が起きてる! もっと調べなきゃ、と思った」と言う。
韓国では1997年に「青少年保護法」が成立し、「同性愛」が「有害言語」として規定された。「同性愛」という言葉が掲載されたウェブサイトは閉鎖に追いやられるなど検閲が行われたが、2004年にこの項目は削除された。
この1997年から2004年の間に10代のコミュニティが確立された、とヨンさんは言う。そして、同時に20代以上の大人とコミュニティが分断された。
◆「レズビアン検閲」の実態
カソリックの高校に通っていた高校生は、聖書をすべて書き写すことを教師に命じられた。理由は、彼女がレズビアンだから。台湾でWOM制作の『OUT:レズビアンの何が悪いの?』を上映したとき、聖書の代わりに仏教の経典を生徒に写させているケースがあることを知ったという。
またある女子生徒は中学の3年間、レズビアンということで教師に監視され、ブラックリストに載り、交友関係を監視されたり罰を与えられたりした。そして最終的に、教師は「悪い友人と付き合っているからレズビアンになった」と親に伝えて、強制的に転校させた。新しい学校でも教師の監視は続き、同級生との関係を遮断された。彼女は精神的に不安定になり、リストカットをするようになる。
現在は高校1年生。その彼女が、今回山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された『OUT: ホモフォビアを叩きのめす!プロジェクト』に出演している。
◆「レズビアン検閲」のきっかけはあるテレビ番組
韓国には、毎週日曜日夜8時から放映される『そこが知りたい』という人気のドキュメタリー番組がある。2001年のとある週には、「10代の同性愛」と題された、レズビアンにフォーカスした特集が放送され、波紋を呼んだ。この放送は1回きりだったが、かなり大きな影響を与えた。
その番組で定義されたレズビアンとは、「ショートヘアでダボダボのワークパンツを履くなど、ボーイッシュなファッションの女の子」。この番組が放送されたあと、各学校で「検閲」が始まった。これは教育委員会などの行政が主導、指揮するものではなく、それぞれの学校で自主的に行われている。特に、宗教色の強い私立の学校で深刻な「検閲」が行われている。「あなたの娘を疑ってみましょう」と書かれた紙が保護者や生徒に配っている学校もある。
この動きに対して、親たちが集まって抗議しようとしたが、娘たちのアウティングにつながるということで、大きな動きになりにくい。また、行政もこの「検閲」に対する反応は鈍く、介入はしていない。
この「検閲」が始まって以降、女子の髪の長さの規定が変わり、今は「耳下3cm以上短くしてはいけない」とされている。「検閲」は最初、ファッションやヘアスタイルから行なわれるが、判断しにくい場合は次に「レインボー検閲」がある。持ち物検査をしたときに、レインボーグッズを持っているとレズビアンだと判断される。また、同性にあてたラブレターを発見された場合、説教され、罰(掃除など)を受ける。もしその相手に会っていたら、体罰の対象になる。
「もし、ボーイフレンドができれば「ロッテワールド」(韓国のテーマパーク)に連れて行ってあげるよ」と言う教師もいる。その経費は教師のポケットマネーによるらしい。
◆観客の反応は
『OUT:レズビアンの何が悪いの?』のときは「信じられない」とショックを受けた観客が多く、『OUT:ホモフォビアを叩きのめす!プロジェクト』では「10代のアイデンティティが確立していない時期に、レズビアンだと決めるのはおかしい」という反応もあり、一般の観客は、学校で「検閲」する側にいる教師と同じような反応が多かった。
一方、レズビアンの観客からの反響はすごかった。「ひどい!」「なんとかしなきゃ!」という具合だ。しかし、ゲイは「なぜここ(映像のなか)にゲイがいないのか」「WOMはどうしてゲイを取り上げないの?」と、自らの不在に不満を漏らす声が多かった。
韓国の男子校と女子校において、同性愛者のおかれる状況はかなり違う。ゲイは同級生によるいじめや、親が精神病院に連れて行くなどの人権侵害が起きている。10代のゲイに対する暴力は激しく、学校に行けなくなる男子生徒が多い。一方、レズビアンに対しては肉体的暴力より精神的暴力のほうが目立つ。レズビアンには学校レベルで弾圧を行なっているのに対して、ゲイへの人権侵害は生徒レベルによるのが特徴だ。
◆参加者との交流
WOMメンバーは日本におけるセクシュアルマイノリティの状況も知りたいということで、時間の許す限りの意見交換が行われた。
セクシュアルマイノリティ大学生のサークル「レインボーカレッジ」のメンバーから、サークルの紹介と、今夏行われた「第6回東京プライドパレード」で初めてフロートを出したことが報告された。早稲田大学のサークル「GLOW」のメンバーも発言し、その他の参加者から感想や質問、自分が抱えている課題など、さまざまな意見が出された。
そのなかで、セクマイコミュニティの話題が興味深かった。韓国のレズビアン・コミュニティには、インターネットを通じてのコミュニティのほかに、オフ会のような「1日カフェ」なるものがあるとWOMメンバーが教えてくれた。10代のレズビアンが集まって交流する場所がないので、1日だけのカフェをみんなで作り上げるというもの。公園や貸し切り可能なカフェを使って、自分たちで飲み物や食べ物を用意し、パフォーマンスをしたり踊ったり歌ったりする。自分たちの文化を作り上げていくことがこの企画の一番の目的であり、醍醐味であるようだ。
最後に、『OUT:ホモフォビアを叩きのめす!プロジェクト』を韓国で上映したあとの映像が流された。観客もみんな映画の中の3人と同じように仮面をつけているところや、主役の3人がそれぞれの思いをのせたラップを歌っているシーン、主人公のひとりの母親が「あなたを愛している」と会場から発言し、抱き合うシーンなど。
『OUT:ホモフォビアを叩きのめす!プロジェクト』をまだ見ていない参加者から、「早く見たいね」という声が次々と出た。次はいつ、WOMのメンバーに会えるのだろう? 『OUT:ホモフォビアを叩きのめす!プロジェクト』をまた日本で上映できるよう、デルタGも画策中。
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