OUT:ホモフォビアを叩きのめす!プロジェクト

[いぬのえいがひょう] vol.009
OUT:ホモフォビアを叩きのめす!プロジェクト (2007) Out : Smashing Homophobia Project
WOM(フェミニスト・ビデオ・アクティビズム)による、韓国のティーンエイジャーのレズビアン3名にカメラを預けて撮った、セルフポートレイト第2弾。
彼女たち自身への問い掛けを通じて、彼女たちの未来を、そして遠く近くの抑圧された世界で生きるマイノリティたちをエンパワーメントするメッセージ。
3名が劇中でそれぞれ歌うラップの完成度の高い詞も聞きどころ。
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1. Coming Out (撮影・出演:Chun-Jae)
同世代のボーイフレンドと交際しているチュンジェ。
学校は、女が女と付き合うのを望まない。
カウンセラーは思春期のうちの一時的なものだと言う。
バスに乗っているとき、車体が揺れてよろける乗務員の彼女を守ってあげたいと思う。そんな何気ない日々のひとこまで、自分がレズビアンだと改めて確信する。
彼は、チュンジェが女を好きでも構わないと口では言う。
でも、レズビアンの記号となっている、男物のジーンズをはくことや、短く髪を切ることを嫌がる。
チュンジェが望まないスカートをはかせて「幸せじゃないの?」と訊く。
「私は、闘って、勝つんだ」
チュンジェは、力無く呟く。
彼は、「女が女を愛することも、人間が人間を愛すること。悪いことじゃない」と理解があるそぶりを見せながら続けて「でも世界ではそう扱われない」と教え諭す。
そんなことはチュンジェさんのほうがよくわかっている。
彼は、「世界ではそう扱われない、だからレズビアンはやめろ」と言いたいのだ。
「世界ではそう扱われない、だから世界は間違っている」とならないのは何故?
ボーイフレンドは、この「OUT」を撮るのをやめろと言う。
チュンジェが、ボロボロだった自分を「OUT」を撮ることで立ち直らせてきたことを、彼は気にもとめず、以前のチュンジェがいいと言う。
男である彼のコントロールに相手が従うことで、相手は幸せになると信じて疑わない。
それは愛ではない。
「私は、闘って、勝つんだ」
チュンジェは、祈るように繰り返す。
***
彼は彼のために死ねと私に言う
私は自分自身になる
彼の同性愛嫌悪を治療してやる
私は自分自身になる
もう男になんか時間はあげない
"Coming Out" (歌/Chun-Jae) より抜粋
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2. Outing (撮影・出演:Cho-I)
幼稚園のときに自分がレズビアンだと気付いたチョイに、世界のすべてが違って見えるほど大好きな恋人が出来た!
けれど付き合いはじめて間もないうちに彼女から一方的に突き付けられた「恋人じゃない、友達ね」という通告。
嫌われたわけじゃない。この場合、男と女なら恋人として付き合い続けるだろうとチョイは考える。
愛と友情は違う、友情ならこんなに胸がドキドキしたりしないとチョイは考える。
どうして彼女は友達だなんていうの? わからない。全然わからない。混乱する。ただただわけがわからない。
彼女に対する憤りの中で、彼女はある考えにとりつかれる。
「私がもし男と付き合ったら、私はレズビアンじゃなくなる。この映画で言ってきたことも嘘になる私はヘテロに変わろうとしている」。
わけのわからない裏切りをした彼女への想いを嘘だったと片付けて少し楽になりたくなったのかもしれない。
ヘテロ女が手酷く捨てられたときは、もう恋なんてしない、と恋愛自体を拒否してしまうかもしれない。
けれどチョイは、ヘテロに変わる、と思ってしまう。
***
それは友情じゃないと 私の心は言っている
みんなと違うことって悪いことなの?
クラスメートが私を呼ぶ 「レズ!レズ!レズ!」
「人じゃない、狂ってる、レズ!レズ!レズ!」
何故そんなことを私に言わなければならないの?
何故私はそれに答えなきゃならないの?
どんな名付けもほしくない─
「たぶん私は女が好き」じゃなくて
「私は女が好き」と言いたいんだ
"Outing" (歌/Cho-I) より抜粋
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3. Outsider (撮影・出演:Koma)
妹にアウティングされたコマ。
噂は学校中で広がり、露骨に、または遠巻きに、クラスメートたちはコマを蔑む。
好きになった娘に、コマはレインボーのキーチェーンをプレゼントした。
彼女は「これ、どこで買ったの? 私、意味がわかってるのよ」とコマを脅す。それでも好きだと告げたコマに彼女は「決してあなたとは一緒に生きていたくない」。
父に隠してレズビアン・カウンセリング・センターのスタッフになった。
大学に行って、卒業して、家族から独立したい。
家では日記も書けない。妹にのぞかれる。フェアじゃない。
コマは、ママに手紙を書く。
「ママ、こんな手紙は読みたくないでしょう。私はレズビアン。これはまぎれもない事実です。私がママの愛する娘であることは変わらない。ママがわかってくれることを願っています。汚いと言われたら私はみじめ。でも同性愛は病気だと考えていても、私はそれを憎みません。いつかわかってくれると願っています。私はママを愛してる」
コマはレズビアンだと言い触らした妹は、「ごめんね」と書いた小さなカードとソフトドリンクをコマの部屋の前に置いていた。
コマは、カードを大切に持っている。
***
レズビアニズムが私のすべてじゃない
でも人々は私のその面だけを見る
星の見えない暗い空の下で私は独りだ
"Outsider" (歌/Koma) より抜粋
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彼女たち3名とも、揺らぎながら、もがきながら、自分はレズビアンだということを確かめる。
私は、本当に、本当に、女が好きなのか。
何度も何度も疑い問い掛けを繰り返して、どうしてもやっぱり女が好きだと確信してゆく。
レズビアンであることには、彼女たちの暮らす周囲にいる殆ど全員が否定的。
否定されている欲望を肯定することは難しいことなのだろうか。
むしろ話は逆に思える。
よってたかって否定されても自分がそれを好きだと思えるなら、それは他の誰の影響を受けたわけではなく本当に好きだということの証明なのではないか。
否定されているからこそ、本当だとわかるのではないか。
大部分のヘテロ・セクシュアルは何故、自分の性指向を疑うことがないのでしょう。
大勢が推奨することであるならば、その性指向は本当に自分のものなのか、ヒトの権力作用の中で構築された規範を内面化しただけなのか、いくら自己に問いかけてもきりがなさそう。
ヘテロ・セクシュアルは不安ではないのでしょうか。
自分に「愛している」と告げる相手の、その言葉が、自分の社会的ステータスのための部品になれ、という意味ではないかと。
もちろん、同性愛者にもその疑念がないわけではない。ロマンティック・ラブ・イデオロギーへの羨望や、ヘテロの性規範をコピーしていることも多いでしょう。
でもそれ以上に、ヘテロ・セクシュアルの場合は、性指向自体が疑わしい。
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コマさんは、母がホモフォビアでも許すという。
チュンジェさんも、チョイさんも、自分をなじる者を責めてはいない。
きっと、それどころじゃない。
南アフリカのアパルトヘイトが撤廃されるまでの経緯を思い浮かべる。
デモをして、ストをして、テロをして、気の遠くなるほど長い時間をひたすらに戦ってきた虐げられた黒人たち。
撤廃後に開設された真実和解委員会にて、拷問殺人者の白人たちにすら、真実を証言することを条件に赦しを与えた。
でも、アパルトヘイトの只中では、誰も彼らを赦そうなどとは思いもしなかったはず。
哀れみや許しは、支配が終結してからの話。
ホモフォビアを許してもいいときがあるならそれは、性差別が集結したとき。
ホモフォビアが過去のものになったとき。
「レズは気持ち悪いけど、あなたはいい友達だ」なんて言う奴を友達とは思わないように。
「ホモは気持ち悪いけど、息子であるあなたは大切だ」なんて言う者なら親と慕わないように。
私に笑顔で接しておきながら、私にひどい思いをさせる連中と仲良くする者を信用しないように。
性が絡む差別に関しては、悪いことを悪いと断罪することすら阻まれていることが多い。
自分を憎む者を憎み返したら、その相手と同じ罪を犯すことになる、なんて。
私の存在を許さない者を、許すことが道徳的だと言うかのよう。
私を存在を許さない者は、彼女の存在を許さない。
私を存在を許さない者を許すことは、彼女の存在を許さないことへの協力ではないのか。
それでも、悪意に満ちた世界で、悪意に「許し」という媚びを差し出さずに生きる未来を、彼女は選ぼうとしている。
現実はまだまだ追い付かないけれど、彼女たちの書いた詞はそれぞれにそう叫んでいた。
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チュンジェさんは、いぬのぬいぐるみ2匹に向かって、嘆きを吐露していた。
いぬかわいいよー! いぬってすてき! わんわん!
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【映画情報】
現在国内ではWOM制作の「OUT:レズビアン検閲」は大阪の女性映像際にて上映され、「OUT:ホモフォビアを叩きのめす!プロジェクト」については山形国際ドキュメンタリー映画際にて上映されたのみ。韓国国内でのDVD販売はせず、LGBT映画祭、女性映画祭関係に出品し、上映の反応に関連して自主上映のかたちをとっている。サウンドトラックCDはデルタGにて廉価でおゆずりできます。ご希望の方はデルタG宛にメールをください。
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