日本のレズビアンは『社会的終身刑』の身
●日本、レズビアンニュースサイト「デルタG」創刊
レズビアン・メディアの歴史が再始動
する
今夏の終わりごろ、ひとりのレズビアンが危機に直面した。イラン出身のレズビアン人権活動家ペガー・エマンバクシュさんはイギリスで難民申請を棄却され、本国への強制送還を控えていた。イギリス法務省による強制出国命令は死刑宣告同様であるとして、世界各国の性的マイノリティが一緒に抗議した。イタリア駐在イギリス大使館の前では大規模デモが繰り広げられ、1万人近くの請願署名がネット上で集まった。
そのような抗議運動の結果、イギリス法務省はペガーさんに対する保護所の抑留措置を撤回し、難民申請の抗訴を受けつけた。こうして、女性を愛する女性たちの粘り強い生命力を見せてくれる歴史はつながりを保ちつづけることができた。
10月20日、日本でペガーさん救援のために集まったメンバーたちが中心となって、本格的なレズビアン人権ニュースメディア「デルタG」をインターネット上にオープンした。記事の主な書き手は、フリーランスライターのミヤマアキラ氏、ジェンダーフリー活動家つな氏、フェミニスト新聞記者の斉藤なぎ氏、映画批評家いぬ氏などだ。
デルタGの「デルタ」は逆三角形で女性の陰毛周辺を、「G」は女性器の快楽点のひとつであるGスポットを意味する。女性の視点で世のなかを見て変えていこうとする象徴的なネーミングだ。
●レズビアンのコミュニケーション
安否の確認すらままならない
メンバーたちは創刊から現在までの約2ヶ月という短期間のうちに、これまでずっと抱えてきた喉の渇きを訴えるかのうように、およそ40の記事を出した。いろいろな政治キャンペーンもした。韓国政府が性的指向を含む7項の差別禁止項目を削除したことについて抗議する連帯キャンペーンもそのなかのひとつだ。
この熱情の陰には、1990年代なかばに次々と創刊され、その後、財政上の困難からしかたなく涙をのんで休刊にいたった日本のレズビアン・メディアの歴史が存在する。また、社会的に「いないもの」扱いされるレズビアンたちが、いい加減その重いベールを押しのけて声を出げていきたいという切実な願いがある。
「私たちのニュースとキャンペーンを見て、『圧力団体ではないか?』と拒否反応を示すひとたちもいます。『政治に無関係な話題のほうがよい』と。このような反応を示すひとびとは、政治に無関心になるように、つまり、『自分たちが政治にもの申してもなにも変わらない』と絶望するように強いられていると私は思います。それを一言でいうと、『社会的終身刑』です。日本社会のレズビアンの人権状況をこれ以上的確にあらわす言葉はありません。
個人的に憂鬱だったり違和感を覚えたりする心境を言語化していくと、それは自分個人の問題ではなく、社会や政治に問題があるのだということにどうしたって気づかされます。私はデルタGを通じてそのことを投げかけていますが、言語化を避けたい、社会の問題に気づきたくない考えたくないというひとびとは、結局、デルタGのような情報ネットワークを敬遠したり拒否したりすると思います。でも、そうやってネットワークを敬遠したり、あるいはネットワークの存在すら知りようのないひとびとこそ孤立して、安否の確認すらままなりません。助けを求める相手がいなくて鬱々とすごした末に自殺に追い込まれるケースもないとはいえません。どうすればそういうひとたちにアプローチしていけるか、それが今後の私たちの課題でもあります」 (つな氏談)
●レズビアンの貧困、起業、自活などに重点を置く
レズビアンの経済的な貧困問題は、デルタGが現在もっとも重点をおいて扱っている問題のひとつだ。労働契約法の改正は、被雇用者の労働条件の悪化をもたらす「改悪」法案であるとして、この法案について考えなおす記事を出した。非正規職の女性の数が増えつづけている日本社会の現実を目の前にして、どれだけ多くのレズビアンたちが身をすくめなければならないのかを憂慮している。
また、日本の女性労動組合のゆるやかな連帯組織である「働く女性の全国ネットワーク(ACW2)」とともに、労働契約法の改正に反対するキャンペーンもした。
一方、オルタナティブな働きかたとして、「レズビアン・ビジネス・モデル」の模索もおこなっている。アジア最貧国バングラデシュで勉強して帰り、フェアートレードの信念で貿易会社を起業した20代なかばの女性を紹介する記事がその出発点と考えられる。
また、独創的な公共事業を展開するNPO代表や実務者たちを招待してのトークイベントもおこなった。このイベントには、女性の自活を助けるNPO「女性のための世銀銀行日本支部」、ニートや引きこもりの若者たちがプロのマンガ作家としてデビューできるよう支援する教育 NPOなどが参加した。
これからも、カミングアウトしにくい状況に置かれているレズビアンたちがどのような方法で起業機会を持ちうるか、レズビアンをはじめとする性的マイノリティを一定の割合で雇うよう企業の社会的責任(CSR)を求める議論とつなげられるかどうか、ひいては、あらゆるひとびとにとって持続可能な仕事とは何なのかについても探究をつづける予定だ。
●レズビアン当事者の声を集める
海外ニュースとしては、アメリカの雇用差別禁止法において、差別禁止項目のなかからトランスジェンダーに関する条項が削除された問題、ネパールの軍隊でレズビアンであることを理由に解雇された女性軍人の問題を扱った。その他、10代レズビアンの人権問題を日本でも提起しようと、韓国の女性映像集団WOM(ウム)の製作者たちと交流会を開いた記事もある。オーストラリアで上院議員として活動する中国系レズビアン議員が、性的マイノリティの労働権を守るために努力していることも伝えた。
文化面では、大阪で開催された性的マイノリティのパレードをレポートしたり、FTMトランスジェンダーの下着を長年にわたって製造してきたテーラーをインタビューしたりした。一方、フェミニズム映画を紹介する批評記事も欠かさず載せている。性的マイノリティに対する差別と偏見を覆してみるために、クィア・スタディーズを易しく解説する記事もシリーズで出している。
メンバー全員が無償ボランティアで活動している状況だが、「『社会的終身刑』のようなレズビアンの状況と向かいあって、少しでも変えていきたい人がひとりでもいたら」、ぜひそのような人と一緒にデルタGをつづけていきたいと語る。日本のレズビアン・メディア史に再び、そして新たに書き込まれる活動がはじまった。
チョウイ スンミ記者@イルダ
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始めまして~
韓国からイルダ(上の)に紹介されたのを読んできました。
きったらこの記事があって、何か嬉しくてコメントします(^^)
日本語はまだまだですけど。。。
国は違うけど同じだなって思いました。
これからも、いいつながりが続けばいいなっとおもいます。
agzakさま
ようこそおいでくださいました。国内外を問わず、さまざまな活動体と連携していきたいと思っています。agzakさんも架け橋となってくださることを願っています。今後ともイルダとデルタGを応援してくださいね。