コスヲタ女性にセクマイが多い理由(わけ)とは?
12月22日夜、冷たい雨が降りしきるなか、セクシュアルマイノリティ女性限定コスプレ/ヲタク交流イベント【Five】に行ってきました。コスプレ業界には、どういうわけか「セクマイ」(セクシュアルマイノリティの略語)が多いそうで、このイベントもその層に合わせて企画されているとのことです。そんなわけで、コスヲタとセクマイの相関をさぐる旅に出かけました。
●コスヲタの殿堂・CROSS吉祥寺
吉祥寺の中心街に位置するCROSS吉祥寺は、「コスプレ系イベントホール&オタク系飲食店複合ビル」。1階は、居酒屋レイヤーズ倶楽部「Fancy Cat」(注:キャバクラではない)、2階はレンタルイベントスペース「Space
Fan」、3階は、男装レイヤーズCafé&Bar「Prince」。全館挙げてコスヲタ・カルチャーシーンの創出・展開をおこなっている。
「Five」イベントが開催されたのは2階のイベントスペース。階段をのぼると、クールに男装した背の高い受付スタッフさんが、丁寧な言葉遣いで応対してくれた。入場チケット代わりのネームプレートは、台紙の色が4種類あり、それぞれ「青=タチ」「ピンク=ネコ」「黄色=リバ」「白=その他」。また、恋人募集のしるしとしてハートマークのシールをつけることもできる。
見ず知らずの不特定多数に向けて、タチ/ネコ/リバというプライベートな属性を表明することに抵抗感を持っているミヤマは、「その他」として白い台紙が用意されていることにいたく感銘したが、じつはこの色、主にノンケ(異性愛者)用だとか。こちらの思惑とはまったく違ったが、ミヤマは白の台紙を選択し、名前のうえに「ノンケじゃないわよ!」と書き込んだ。
●レイヤー女性にセクマイが多いのはなぜ?
会場内は蛍光灯で煌煌と照らされており、すでに数十人のレイヤー(コスプレイヤー)たちが集まって歓談している。2丁目系の女性オンリークラブイベントが照明を落とした空間で行なわれるのとは、雰囲気がかなり異なっていた。さまざまに趣向をこらしたコスチュームをお互いに鑑賞しあって楽しむことがコスプレイベントの大目的のひとつだからだろう。
Fiveは今回で4回目を迎える。第1回目からして350人を超える参加者数を記録した大規模イベントだった。このようなイベントを支えるレイヤー層の大半は10代であるため、3回目までの開催時間は午後から夕方までとし、アルコールの販売は控えていた。そして今回は、セクマイ女性同士の出会いをサポートするために、参加条件を20歳以上にしてオールナイトイベントを試験的に行なってみたのだと、Five主催の深(しん)さんは言う。
——レイヤー女性にはセクシュアルマイノリティが多いと聞きました。そのような実情があるからこそ、こういうイベントが成立するのだと思いますが、レイヤー女性にセクマイが多いのはどういう理由からだと考えられますか?
深:漫画やアニメのキャラに惹かれて、そういうコスプレをしたいと思う女の子たちは、たぶん自分自身も中性的になりたいと思っているし、中性的な相手に惹かれるんだと思います。日常生活はフェミニンな格好をしていても、コスプレイベントでは男性キャラのコスプレをしたり、逆にふだんはボーイッシュだけれど、イベントのときだけフェミニンなキャラに扮する子もいます。
●主宰の深さんは姉妹そろってセクマイ
そう語る深さんは、現在27歳で、レイヤー歴は約10年。ふだんはエルドピエロという男装PUB(自由が丘)に勤めており、セクシュアリティはFtXを名乗っている。エルドピエロのママさんは宝塚のご出身。「現在のオナベバーの主流は、FtMを標榜して肉体的にも男性化を目指すスタッフが多いんですけど、うちの店は、体を改造せずにナチュラルな中性化を目指すスタッフが多いんですよ」と深さん。
妹のKYOさんもFiveのスタッフで、姉妹そろってセクシュアルマイノリティという貴重な組み合わせだ。じつはこの姉妹のお母さん(故人)も、若いころは六本木の男装PUBに勤めるオナベだったという。なんてステキな親子!
このイベントでもっとも驚かされたのは、スタッフさんたちの応対の丁寧さだ。フレンドリーだが礼儀正しく腰は低く、滑舌がクリアで言葉遣いがじつに丁寧。ファミリーレストランの給仕係よりずっと印象がよい。それもそのはず、接客のプロである深さんがスタッフ教育には特に力を入れて行なっているのである。
登録しているイベントスタッフは現在50名ほどで、全員が無償ボランティアだ。スタッフのひとりの絢(あや)さんはレイヤー歴9年。コスチュームづくりが大好きで、もはや趣味の域を超えようとしている。依頼されれば無料でコスチューム製作を引き受け、これまでつくった衣装は数えきれない。絢さんは現在大学4年生だが、より本格的にコスチューム製作に取り組むために、服飾系の専門学校で基礎をしっかり学び直したいと語る。
●レイヤー同士の恋愛やいかに?
参加者のひとりKさんは、ミヤマが取材したなかでは最年長の33歳。この日は某ゲームキャラである伊達政宗のコスプレで参加していた。胸元を肌色のテーピングで覆っており、「それ、はがすとき痛いんじゃないの?」と話しかけると、「はい、乳首がもげそうになります」と苦笑いしながら答えてくれた。
Kさんのレイヤー歴は15年。これまで交際した相手もレイヤーで、レイヤー同士の恋愛について語ってくれた。「お互いコスプレした状態で出会うから、素の相手じゃなくてキャラ萌えの延長で恋愛がはじまるケースが多いんです。素顔とのギャップも大きいし。メイクですか? そりゃもちろんコスやるときはがっつり工事してます(笑)。それに、相手が特定のキャラやカップリングに関心があるときはいいんですけど、関心がほかのキャラやカップリングにうつると、恋愛にも冷めてしまうんですよ」。レイヤー同士の恋愛には、ゲレンデの恋のような一面があるということか。そういうKさんのネームプレートには、恋人募集中マークのハートシールがしっかりと貼られていた。
見れば、深さんやKYOさんのネームプレートにもハートマークのシールが貼ってある。モテないことはないと思うのだが、仕事やイベント企画に忙しくてパートナーをつくる余裕はないのかもしれない。セクマイ女性レイヤーたちの出会いサポートに尽力すればするほど、自分のことは後回しにならざるをえないだろう。医者の不養生、紺屋の白袴である。
●セクマイレイヤーのメディア露出はハードルが低い
会場では、参加者を募ってのねるとん企画が行なわれた。タチさん6人に対し、ネコさん7人で、すでに計算が合わないのだが、この回はカップル不成立におわった。不成立にもかかわらず、積極的なネコさんのひとりは、壇上からおりたタチさんに話しかけ、チューをゲットしていた。全国の待ち子なネコさん、ネコリードに磨きをかけましょう(笑)。
その後、ランジェリースタイルのダンサースタッフ数名が舞台に立ち、会場の明かりが落とされてダンスタイム。レイヤーさんは基本的に文化系なので、踊れるレイヤーさんはとても貴重なのだそうだ。ダンサーさんのなかにわりと動きにキレがあるかたがいらしたので、話しかけてみたところ、そのかたはひごろフィットネスジムでボクササイズのインストラクターをやっているとのことだった。
セクマイ女性が集まっているとのことで、取材スタッフのミヤマもつなも写真撮影にはかなり慎重になっていたが、お願いしてみるとどのレイヤーさんからも意外にすんなりOKをいただけた。コスプレをするということはある種仮面をかぶるのと同じことなので、素顔の自分とは違うから露出にはさほど抵抗がないのかもしれないし、また自分のコスチュームを積極的に披露したい気持ちもあるはず。撮影依頼を断ったり断られたりして心にしこりを残すこともなく、お互いに堂々と存在をアピールできる点で、セクマイ女性がコスプレする意義はかなり大きいのではないかと思う。コスヲタではないセクマイさんで、写真や映像での露出に抵抗があるかたは、ぜひコスプレ姿で露出なさってはいかがだろうか。
【次回イベント】
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