極限まで追いつめられないと、尊厳は自覚できないのか?
[クマのエイガヒョウ 004]
『私たちは風の中に立つ
韓国・東一(トンイル)紡織労組1972〜2006』
We Are Not
Defeated——われらは正義派だ(2006)
2月2日、第2回ACW2総会で上映されたのを観てきたー。WOMが制作した作品なので、期待はとっても大。そして、見事その期待に応えてくれる作品でしたー。
【あらすじ】
小学校を卒業し、ようやく就職できた職場なのに、40度の高温の中、深夜まで゙馬車馬のように働くばかり。昼食時間も生理休暇も有給休暇もない。男性社員からは「学歴がない」「女のくせに」とバカにされ、頼みの労働組合は会社の言いなりの男たちが牛耳っている。そうだ!
女性を労働組合の代表者にして、職場を変えよう!
1972年、韓国の東一(トンイル)紡織の女性労働者は 韓国史上初の女性支部長を選出した。しかし、彼女たちを待ちうけていたのは、会社ばかりか、政府・労働組合一丸となった弾圧だった。1978年、暴力をふるわれ糞尿を浴びせかけられた。その写真は、世界に「東一紡織女性労働者の闘い」を知らせ衝撃を与えた。
その後、124人が不当解雇され、闘いはさらに激しさを増してゆく……。あれから30年以上が過ぎた2005年、50歳代になった彼女たちは、巨大な「東一紡織」の社屋の前に立ち、デモを行い、今なお復職闘争を続けていた。
***
歴史的な資料映像や画像と、いまなお闘争をつづける、東一紡織の元・女性工員たちのインタビューで綴られる。
当時の東一紡織仁川工場には1300人ほどの工員が勤めていて、そのうち男性は300人ほど、女性は1000人ほどだった。
就業年齢に達していなくても、貧困家庭ゆえ「家計の助けになりたい」「自分も勉強したいし、弟妹たちを学校に行かせてやりたい」思いで、年齢をごまかして働くケースが少なくなかった(当時の役所は年齢の書き換えにすぐ応じてくれた)。会社役員の自宅で「女中さん」として1年勤めたら入社を認めてもらえる、という特殊なルートもあった。
作業場は40度の暑さで、手も汗疹になるほどだった。1日12時間労働で、トイレや食事のための休憩時間は1日にたった10分しかない。5分でかき込むように食事を済ませ、朝から晩まで働きっぱなし。生き地獄だった。胃腸炎になり、1ヶ月で7キロ痩せた。
工場内では、「生産性向上!」「1分で140歩」などとストップウォッチを持った現場監督が怒号を飛ばす。まるで動物の調教。安い眠気醒まし「タイミン」を毎日飲んでいたが、疲労が限界に達したときにはまったく効果がなかった。
そのうえ、「女のくせに」「学歴もないくせに」とバカにされ、蔑まされる。親の金で学校へ行った連中に。
休みの日には、おしゃれをして街に出歩いたが、心に穴が開いている感じだった。
バカにされたくない、世の中のことを知りたい、無知コンプレックスを克服したい——女性工員のなかには、独学で本を読む者たちが少なからずいた。靴や洋服よりも、本を買うほうが嬉しかった。しかし、夜勤が明けて帰宅する道中、学校へ行く同年代の子たちとすれちがうとき、胸が痛んだ。「学校に行けない」ということが、心のしこりだった。
社内には、女性工員たちが自主的に結成した学習グループがいくつもあった。グループ名はさまざま。「常緑樹」「マサキ」「果実」「マグマ」「石英」「不死鳥」などなど。ともに学ぶ喜び。クラブ活動でお互いが心を開きあい、団結が生まれ、問題の意識化がすすんだ。かのじょたちは、労働組合への関心を強めていった。
1300人で組織される組合は、たった数名の男性幹部に牛耳られていた。労働者のためになにをやっている組織なのかわからない。男性幹部たちは、労働者をおさえつけておくために会社から金を握らされている。これでは御用組合だ。
男性工員にのみ、4時間につき15分という単位でタバコ休憩が認められていた。女性工員の賃金は男性工員の半分以下。生理休暇もなければ有給休暇もない。男ばかりの組合ではダメ。自分たちの法的権利を守るには、自分たちの味方になる幹部を立てなければならない。
1972年5月10日、東一紡織仁川工場初の(ということは韓国初でもある)女性支部長が誕生した。クラブ活動を通じて団結した女性組合員たちが、女性候補に票を投じた結果だった。「男は怖いし警戒する。女だからついていこうと思った」。
男性幹部は賄賂によって会社が簡単にコントロールできる。労働者たちの不平不満をおさえこみ、デモもストもやらせないよう抑圧することもできる。しかし、女性幹部相手に賄賂は通用しない。
その甲斐あって、工場の労働環境、勤務条件は向上した。食事休憩の時間を確保し、生理休暇の有給化、男女賃金差別の撤廃、シャワー設備などの基礎的衛生施設の準備などなどを実現。その一方で、会社側は女性工員たちの存在を怖れはじめ、御用組合幹部や国家権力と結託して、かのじょたちの勢いを阻止しようと画策した。
77年5月には新たに女性執行部が誕生。かのじょたちは代議員大会を準備したが、会社側と男性組合員がグルになって潰しにかかる。組合を支配し、その活動を混乱させようとした。女性たちは民主労組を守るべく抵抗したが、7月には女性支部長ほかが警察に連行される。それに対し、女性組合員たちは篭城ストライキを起こし、参加者は800人ほどにふくれあがった。「先輩たちのやっていることは正しい、だから自分も先輩たちについていく」。
ストライキの現場を武装警官たちが取り囲む。女たちは誰ひとりとして警察に引き抜かれまいとした。だれかが上着を脱いでブラジャー一枚の姿になった。それにならって周りの女たちも次々に上着を脱いでスクラムを組む。裸同然の、なんの武器も持たない女たちを、武力で弾圧するのか——そんな思いが込められていた。これが「裸体示威事件」である。
「私たちの武器は、信頼と団結だけだということに目覚めた」。
その後も、会社側による女性組合員たちへの嫌がらせ、弾圧はつづく。組合員たちは負けじと闘った。そんな折りに「糞尿浴びせ事件」(東一紡織事件)が起こるのだけど、この事件の経緯・詳細含めて、こちらの参考資料(韓国における女性の解放と労働運動)をお読みください。
映画のなかのコメントで補足すると、この糞尿事件は女性たちの台頭を苦々しく思っていた一部の男性組合員たちによる個人的な行動ではなく、大韓民国中央情報部(略称:KCIA)がグルになって行なったということ。ストの場合もそうだったが、「実力行使では、公権力はいつも会社側についた」。当時の朴正煕(パク
チョンヒ)軍事独裁政権にとって、民主労組の活性化は頭痛の種だった。仁川工場における民主労組の波が、ほかの工場や企業に飛び火するのを怖れていたのだ。
***
映画はこの後もまだつづくんだけど、全部ここに書き出すとキリがない。エイガヒョウというより、ベタな内容紹介になっちゃったし。でも、こうやっていくら言葉を重ねても、かのじょたちの身に起こったことの壮絶さしか浮き彫りにならないのが、もどかしい。
クマがこの映画を観てもっとも強く感じたのは、いまも継続している30年間の闘争の歴史を語るかのじょたちが、とても魅力的でキラキラしているということ。「女のくせに」と罵られ、糞尿をかぶって貶められても、それに屈せず、知恵をつけ、団結して抵抗しつづける。そんなかのじょたちに、クマは強く惹かれる。憧れるし、自分もそうありたいけれど、果たして自分がかのじょたちのような立場に置かれたら、かのじょたちのように不屈の精神で闘うことができるだろうか……とも思う。
かのじょたちの強さ——それは生来の強さではなく、「女であること」「学がないこと」「貧困であること」による複合差別と闘う過程で培われた強さ——は、クマにとってはど真ん中の性的魅力になる。そのことが、この映画を観てはっきりわかった。流行のファッションとかヘアスタイルとかメイクばかりに踊らされて、自分の知性を活かそうとしない女子には、魅力を感じないどころか、はっきり言って嫌悪を感じる(そういう女子を“好む”男子にもね)。
これはいわゆるミソジニー(女性嫌悪)ではないよ。むしろ、一般女子が知性を活かさないことでミソジニーの強化をしているという現実を、クマは強く憎んでいるの。ミソジニーっていうのは、女子が知性を活かすことに対する恐怖なんだから。誰が恐怖しているかは一目瞭然でしょ。
【作品情報】
この作品は、ビデオ工房AKAMEでDVD販売しています。個人価格(¥5,250)と上映権付き価格(¥21,000)があります。上映権付きだと、個人視聴はもちろんのこと、有料で上映会を行うことができます。ぜひ、いろんな場で上映会を開催してほしいですー。
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