小さな悪の華
[いぬのえいがひょう] vol.020
小さな悪の華 (1970) Mais Ne Nous Deliverz Pas Du Mal
寄宿学校に通う少女、アンヌとロールは悪に魅せられ、数々の悪徳を繰り返す…はず。
宣伝文句を信用すると、そのはず、だった。
なんだか、これ、ちがう…。
官能小説を読み耽ったり、口紅を塗り鏡の前でけだるく脱衣して陶酔したり。アンヌの悪徳の芽生えはじめのうちはそれくらいのもの。
悪、というか、そんなものは悪でも何でもない。
一方、寄宿学校のシスターたちは、姦淫を罪と教えていたのは建前で、陰では互いに接吻しあっていた。
ある日その現場を目撃したアンヌは、たぶんシスターたちを解任させるために、告白のふりをして神父に訴える。
けれど神父は「姦淫は罪といっても大人には仕方のないこともあるんだよ」と片付け、アンヌに「シスターたちの接吻を見て君はどう感じた?興奮した?」と訊いてアンヌの肢体に猥雑な妄想を巡らす。
シスターや神父の、タチの悪い偽善の二枚舌のほうが、アンヌより余程、悪ですね。
その後、アンヌとロールの行う悪は、猫に意地悪、鳥殺害、放火を除けば、ひたすら、男にふとももやパンツを見せて誘惑するということばかり。
この映画では、若い女のふとももを見た男たちは、一名残らず、暴力をふるって無理矢理犯す衝動を抑えることができない。
目を見開き、すぐさま強姦しようとする。
悲鳴をあげて拒否しても、手が届く範囲にいる限り乱暴し続ける。
あなたたちは、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のゾンビですか。
アンヌとロールがふざけて誘惑したのは悪いにしても、その誘惑は、セックスしましょうと求めているだけで、性暴力をふるってほしいなどとは全く言ってない。
アンヌとロールの行動ばかりを悪だと言うことは。
「誘惑するふしだらな女は、暴力をふるわれても仕方がない。誘惑した方が悪い」。
また、「男は誘惑されたら暴力をふるう衝動を抑えられないものだ。男は悪くない」。
そう言っているも同然。
だから、この映画を観て、お洒落な退廃と耽美に酔って楽しむ、というだけだとしたら、この映画を嫌悪する。
ただ、映画の意図するところを掴みかねているので、それをもってこの映画を誹謗する気にはなれない。
1970年は、フランスで、フェミニズム運動が社会的コンセンサスを得ることが出来た頃。
この映画は出てきた時代と場所を考えると、ほんとうの悪とは何か、偽善とは何か、また悪を装うことの是非は。そういうことについて考察や議論してもらう意図があったのかもしれない。
この映画の二枚舌神父は教会で、家族をないがしろにし、女の地位を低める風俗が蔓延していることを嘆く説教をする。
ここでいう家族とは、言い換えれば「女の地位を低めるための制度」ということ。
まとめると神父が言っているのは、「女の地位を低めるための制度をないがしろにし、女の地位を低める風俗が蔓延」となる。
この映画は、そういった可笑しさにツッコミを入れながらニヤニヤ楽しもう。
ところで! そんなことより、いぬかわいいよー! いぬってすてき! わんわん!
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