生きるか死ぬかの決断
イラン出身のティーンエージャー、メフディ・カゼミ Mehdi Kazemiさんはゲイである。メフディさんは自身のボーイフレンドが同性愛者であることを理由に絞首刑にされたのち、英国での保護を求めた。しかし、戻れば処刑は免れないであろうメフディさんを、なぜ英国はテヘランに送り返そうと躍起になっているのだろうか。(Robert Verkaik、2008年3月6日木曜)
イラン当局によって恋人が処刑され英国での保護を求めた10代のゲイの少年は、難民申請を拒否され、現在まさに恋人と同じ運命に瀕している。
メフディ・カゼミ(19)は2004年に語学留学のためロンドンにやってきたが、後にイラン警察によって恋人が逮捕され、ソドミーの罪に問われて絞首刑に遭ったことを知った。
テフランにいる父親との電話でのやり取りのなかでカゼミさんは、恋人が2006年4月に死刑執行されるまでのあいだに、それまでの男性との性的関係について質問を受け、尋問されるなかでカゼミさんの名前をパートナーとして挙げていたと伝えられた。
イランに戻れば生命が危ないと案じ、カゼミさんは英国での難民申請を行ったが、2007年後半、かれの申請は拒否された。強制送還の可能性に脅え、カゼミさんは必死になってその危機を逃れるべく英国を去り、オランダへと向かった。現在かれが拘束され、大きくなりつつある抗議運動があるのもオランダである。
英国に行けばほぼ確実にイランに送り返されることは分かっており、カゼミさんは昨日オランダの裁判所に現れ、英国への送還をとりやめてもらうよう嘆願した。
英国政府への手紙のなかで、カゼミさんはジャッキー・スミス Jacqui Smith内務大臣に次のように述べた。「大臣にお伝えしたいのは、私が英国へ渡ったのは難民申請をするためではなかったということです。私がここへやってきたのは勉強して祖国へ帰るためでした。しかし過去数ヶ月のあいだに祖国での私の状況は一変し、イラン当局は私が同性愛者であることを知り、私の行方を探しています」。そしてこう続けた。「私は男性に惹かれるのをやめることはできません。そしてそれは一生変わらないでしょう。そのように生まれたのです。変えることはできません。しかし、不運にもイランではこの私の感情について語ることができないのです。もしイランに帰国すれば私は逮捕されますし、私の元恋人のように処刑されるでしょう」。
オランダでの控訴審判決が、カゼミさんにオランダでの難民申請を許すか(そしてそれはゲイのイラン人にとっての特別な保護を意味する)、あるいは英国への強制退出を命じるかによって、かれの未来は大きく左右される。ヨーロッパ各地のゲイ権利団体はカゼミさんを支援しており、かれが英国で住めるようにと運動している。
Gay Asylum UK のオマール・カドゥス Omar Kuddusは、英国はカゼミさんのような同性愛難民の申請者への保護を強めるべきだと語る。「現在オランダの法廷で議論されている法的な問題は、EU 諸国での難民申請者は最初に申請をおこなった国へと送還されなければならないとするダブリン条約のもとで、カゼミさんが英国へ送還されうるのか、そうされるべきなのか、というものだ」
ゲイ権利運動団体 Outrage のピーター・タッチェル Peter Tatchellは、英国政府のこの方針は「非道で恥ずべきもの」だと言う。「イランに送り返されたら、メフディは同性愛を理由に処刑される危険にさらされる。難民条約における英国の義務を放棄する、言語道断なものだ」
さらにこう付け加える。「これは英国政府が、難民の数を減らすことを個人個人の難民申請者の状況に鑑みることよりも重要だとしている最新の例だと思えばよい。イランが若いゲイ男性を絞首刑にすること、しかも極めてゆっくりで残忍な絞首の方法を用いることは、世界中が知っていることだ。そして政府は難民の数を減らすという目的を果たすために、この若い男性を死の可能性へと送り返そうとしているのだ。これは心のない、残酷で卑しい、反難民的な方針である」
National Coalition of Anti-Deportation Campaigns (英-反国外退去運動協会)のエマ・ギーンEmma Ginn は、ギャトウィク Gatwick 空港近くのティンスリー・ハウス退去センター Tinsley House RemovalCentre でカゼミさんに会ったが、そのときのかれは内務省によって勾留されていた。ギーンはそのときを思い出しこう語る。「私がティンスリーで彼を訪ねたとき、メフディはとても不安な様子だった。内務省はかれを2日後にイランに退去させる予定だったし、そうなったらかれは恋人と同じように処刑されてしまうリスクがあった。英国から逃げ出したのは当然だと思う」
イランの人権運動家たちによれば、1979年にアーヤトッラーが権力を得てからすでに4000人を超えるゲイ男性とレズビアンが処刑されている。ゲイ男性が死刑執行を受けた最近の例はマクワン・モラウドザデフMakwan Moloudzadeh (21)であり、かれはイランの法律において死刑に値するソドミー(あるいはlavatと呼ばれる)の罪を犯したとして、12月に処刑された。
昨年外務省は2005年5月からのヨーロッパ中の大使館の間のやり取りを公表した。そこには公共の場で絞首刑を受けたマーモウド・アスカリMahmoud Asqari (当時18才未満)とアヤッド・マーホウニ Ayad Marhouni への言及があった。
内務省が移民管理官向けに出しているガイダンスのなかには、イランがゲイ男性を処刑することを認める記述がある。しかしどういうわけか、ゲイ男性とレズビアンに構造的な抑圧があるという訴えは認めていない。
政府は個々のケースにコメントをしない方針だが、ある内務省の広報担当者は次のように述べている。「英国政府は、国際法のもとでわれわれができる範囲内で、本当に支援の必要なひとには保護をするよう努めています。もし申請が許可されない場合は、独立裁判官に働きかける権利もありますし、難民・亡命を決定するプロセスおよび独立法廷で国際的な保護が必要ではないと判断された場合を除き、強制送還をさせることはありません」
「退去を決定する前には、それぞれのケースについて非常に配慮して決定を出しますし、帰国によるリスクがあるだろうと判断される場合には退去しません。しかし、難民・亡命のシステムの統合性を保つために、そして事実に基づかない申請を退けるためには、保護を必要としていない者を強制送還させることが可能でなければいけないのです」。さらに加えて言う。「ダブリン条約の規定には、祖国を離れたあとに辿り着いた最初の安全な国で保護の申請をしなければならない、とあります。それが守られなかった場合、規則では実質上の申請がなされた第三国(訳者注:英国のことと思われる)への申請者の送還が許されるのです」
(元記事:英国インディペンデント紙サイトのA
life or death decision、翻訳協力:マサキチトセ)
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