笹野みちるさん独占インタビュー(1)
2008年4月29日に行なわれるKAB.との初セッションを控えて、笹野さんの現在の心境やこれまでの活動・人生を振り返ってのお話を、ざっくばらんにうかがいました。ミヤマは笹野さんとは初対面でしたが、とてもフランクに、ピースフルな雰囲気で語ってくださいました(2008年3月24日 東京・文京区にて)。
イベント情報はこちら
●東京少年から20年を振り返って
——今回のライブはKAB.のほうからお誘いがあったということですが(ミヤマ)
笹野:KAB.と初めて会ったのは去年(2007年)の5月、彼が私のライブに来てくれた。それからちょくちょくメールをするようになって、年末くらいに彼がCDを出して、私に送ってくれた。そのときに、「来年の春ぐらいに一緒にライブしませんか?」と。「おっ、来たー!」と思った(笑)。それから私はバタバタしてて、今年に入って2月ごろに具体的な話をKABがしてきた。「4月の末に晴れ豆(東京・代官山のライブハウス『晴れたら空に豆まいて』)を押さえてあるんで、どうですか?」と。
——笹野さん的に、KAB.の音楽はいかがですか?
笹野:びっくりしました。めちゃめちゃポップすぎて(笑)。最初私はKABの音楽をぜんぜん知らなくて、彼がカミングアウトしたころのパンキッシュなビジュアルだけ知ってたから、ロックとかパンクなイメージを勝手に抱いていた。でも、実はめちゃめちゃ歌謡曲。彼自身も歌謡ポップだと自分で言ってるから、あれは確信犯だよ(笑)。これ、どうコラボしたらええんかめちゃめちゃ悩んでた。
お互いの曲を聴いてきた年月から言えば、KAB.が私の曲を聴いてきたほうがずっと長いから、「あの曲やりたい!」ってのを、もう2曲くらい提案されてる。それはやろうって決めてる。私もKABの曲を勉強せなあかんから、「自分の曲でやりたいのある?」って聴いたら1曲出してきてくれた。
——どの曲ですか?
笹野:それはライブに来てのお楽しみ。彼自身がすごく思い入れのある曲、とだけ言っておこうかな。それ以外の曲は彼と一緒に選んでいくと思う。KAB.はピアノも弾けるしギターも弾けるし、私なんかよりずっと芸達者なので、ふたりでやる曲は全部演奏やってほしいくらい(笑)。
——東京少年のころの曲だと、KAB.の音楽世界に通じるものがあるのかもしれない。いまの笹野さんの曲調はまただいぶ違うと思うけど。こないだ、東京少年時代のMV観て、またグッときちゃいました(つな)。
笹野:思い出すと恥ずかしい(笑)。もう20年前だからね。いいかげん「40代からの私」っていうのをやらなあかん。
——いま、おいくつなんですか?
笹野:去年の10月に40歳になりました。40になったときはデカイなと思いましたよ。だって、20歳のときからちょうど20年経ったってことで、これをまた重ねると今度は60歳ですよ。20歳から40歳って、自分でしっかり把握できている20年でしょ。あそこであれして、ここでこれしてたらあっという間に20年。これをもう一回繰り返したら60よ。これはさすがにヤバいと思いましたよ。これからの1年1年は無駄にできへん、っていう意味で。
——20歳といえば成人の年。そのころはどんなことを思ってました?
笹野:ちょうど20歳のときに大学を休学して、東京少年でデビューしたんですよ。私は苦労するんだろうなと思ってた。中学・高校は女子校だったし、大学時代もその延長で恵まれた居心地のいい環境で生きてきたけれども、これでポーンとデビューして大人の世界に入ったら、大人の世界=男の世界だから——私の心はすんごい赤ちゃんみたいなものだとわかってたし、そこからいくら「成長しよう」という内容の歌を歌っても、その赤ちゃんみたいな自分の心がめちゃめちゃになるだろうって覚悟してた。そしてその通りになった。
——赤ちゃんみたいな部分が、クリエイティビティの源泉だったりするのでは?
笹野:良く言えばね(笑)。でも、そんなひ弱なもんではアカンやろ、と。とはいえ、無理矢理だったけど、あのときあそこでやってみたことは自分にとってすごく良かった。いま振り返ると、あのときが自分の原点だなと思う。セクシュアリティのことを考えるにあたっても、あのころが原点。理論武装もなにもせずに、自分の好きなもの、好きなこと、関係性とかをすごく歌っていたという意味では、あのころに形にしておいてよかったなと思う。
——KAB.も理論武装するわけではなく、自分の大切なところだけはきちんと歌って、もちろんセクシュアリティやジェンダーのことも、直接的な言葉じゃないけど、詞のなかに織り交ぜちゃおうっていうのは感じる。KAB.にしても笹野さんにしても、それはほんとうにピュアな部分であって、だれにどうこう言われる筋合いのないことだし、思っていることを素直に表現していますよね。
笹野:当時の私の中には、ピュアに「女の子が好きだ!」ということの神々しさがすごくあった。でも、その後めちゃめちゃになって、今度は理論武装する時期があって、という具合に、面白い20年間だったなと思う。
●KAB.と笹野の「ピュアネス対決」?!
——個人的には、『Coming OUT!』よりも『泥沼ウォーカー』
のほうが好きです。あの時代によく鬱をカミングアウトしたなーと思って。そのずっと後でも、レズビアンをカムアウトしているあるひとが、「レズビアンであるよりも鬱であるほうが恥ずかしい」なんて言ってて、呆れました。
笹野:『Coming OUT!』はある意味では、レズビアン・イメージ向上のための戦略本だもの。『泥沼ウォーカー』
は素のままだからぜんぜん売れなかったもん(笑)。
——鬱であることもカミングアウトする時代になった(笑)。いまも、「私のパートナーは鬱なんです」っていうような本がある(細川貂々『ツレがウツになりまして。』のこと)。セクシュアルマイノリティではないんですけどね。だから、鬱のカミングアウトチックな本。
笹野:やっぱね、ちょっと時代的に早すぎたね、私は(笑)。
——いつも先駆者(笑)。そういうふうにつねにものごとを先んじて感じるから、しょうがない。結局いつも「早すぎるぞ」「赤ちゃんすぎるぞ」と言われつづけてきたんですよね。
笹野:東京少年のころはそうやったねー。「お前は清流の鮎だ」とか(笑)。厭味でね。
——濁流では生きていけないぞ、と。
——KABももしかしたら、周りからそう言われて凹んでいたときがあったかもしれない。でも、だれからなにを言われても「それが何か?」みたいに、自分はこれをやるんだ、っていうふうにいまは思っているのかもしれない。
笹野:私もそのへんの話は聞いてみたい。
——私は今回、KAB.側の話をよくよく知ってみると、「うわっ、すごいイベントじゃん!」と思ったんです。日本社会の歴史的にも(笑)。だって、いままでこんなライブあった? あえて言ってしまえばGID(性同一性障害)とレズビアンのセッションってことだけど、でも……。
——音楽がつなぐんだな。
笹野:だから「祭りにしようよ!」と思ったのよ。でも彼はとっても地道なアプローチ(笑)。彼なりに温めているものがあるんやろうな。
——チャンスだと思う。ライブのときに何かケミカルなことが起こって、その後KAB.も笹野さんも何かが大きく動くかもしれない。そういう意味で、今回のライブはすごく大きなひとつの結節点になると思う。
笹野:私も、正直言って不穏な部分(笑)も多少はあるけれども、それも込みで、本当にフタを開けてみないとわからないという覚悟をしたうえでイベントに臨みたい。本当に何が起こるかわからないから。単にポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)に忠実なライブをやってもしょうもない。ある意味、彼が役者だったらそういうふうに武装することもできたけれど、そうできないのが逆にリアルじゃないですか。
——ということは、「ピュア笹野」で攻めるってことですね(笑)。「赤ちゃん笹野」で。じつは東京少年ってこと?
笹野:(笑)。それはないけど、やることはやるよ。もうオールピュアにはできひんけど(笑)。
——トークももちろん重要だけど、歌でどうぶつかりあうかがキモだと思うんです。KAB.も真剣勝負だし、笹野さんもピュアネス勝負。「ピュアネス対決」っていうのはどう? みんながみんなピュアな心で、傷ついたり泣いたりしてきたことが、全部歌になって出てくるわけですよ。
笹野:強いて言えばそこが共通項なんよね、KAB.と私の。
——それが歌でどんどん増幅されて強調されていったら……。
笹野:泣くよね(笑)。
●「レズビアン」「GID」は禁句にする(笑)?
——わたしは正直に言うと、リアルタイムでは東京少年は聴いてなかったんです。KAB.の歌もいままでほとんど聴いたことがなくて。ただ、隣でいつもつなが「今回このふたりがライブでセッションするのは歴史的な結節点だ!」みたいに熱く語っているのを聞かなければ、「えーと、なにがそんなにすごいのかな?」と思ってたはずなんですよ。
——私も東京少年はリアルタイムじゃなくて後追いだったし、笹野さんのカムアウトも、KAB.のカムアウトも知ってから聴いているけど、曲を聴けばセクシュアリティのことを抜きにして、純粋に、「ああ、いい曲だな」って思いますよ。
笹野:それはなによりですよ。
——だから、笹野さんの歌もKAB.の歌もぜんぜん聴いたことがないひとでも、ピュアネス対決の歌を聴けば、その良さはきっとわかると思う。
笹野:たぶん、入口としては、セクマイのひとも運動系のひとも、なにも知らないひともただ大好きなひとも来るかもしれへん。で、聴いてもらって、そのひとたちのピュアな気持ちに落とし込めたらすごくいい。
——東京少年はむしろ、セクマイ以外のひとたちに受けたからこそブレイクしたわけでしょう?
——あのときの曲だってレズビアンとは一言も歌っていない。でも、いまになって聴くと、その部分で共感するところもすごくたくさんある。
笹野:吉屋信子とかと同じような世界だからね。
——笹野さんがカムアウトする前からすごく共感しているひとは当然いる。作品で勝負してきたわけだから。もちろんそこには笹野さん自身のセクシュアリティが反映されているけれども、それを声を大にして言わなくても、ぜんぜん違うセクシュアリティのひとでも、音楽はスッと入ってくる。だから、むしろライブでは「レズビアン」も「GID」も禁句にしたらどうですか?(笑)
笹野:(笑)
——だけど、絶対かかわってくるじゃないですか。生きることに関してセクシュアリティは、聴いている私にもかかわってくるから、あえてその言葉を使わなくても、「たいへんだったよね」って、生きかたを話すだけで・・・。
笹野:恋バナとかしたりしてね。でもそれは『Coming OUT!』にもさんざん書いてきたことだし、最近のことはアイドル路線で行こうと思ってるから(笑)。プライベートはなにも言いません(笑)。
——なにそれ(笑)?! いつからアイドル路線ですか???
笹野:40から(笑)。
——でもKAB.にはいろいろ聞くんですよね(笑)。
笹野:当たり前やん。もう自分のプライベートは売りません(笑)。私も去年はプライベートでいろいろあったからねえ。
*というわけで、次回は、40歳のアイドル宣言をあえてスルーして(笑)、笹野さんのプライベートライフをどどーんとお聞きしちゃいます。
<つづく>
---------------------------------------------------
<俺と私。…弱くてもいい、やさしくなれなきゃ意味がないっ!>
〜KAB.と笹野みちるの接近遭遇・本音うちあけ弾き語りな夜〜
-----------------
日時:4月29日(火・祝)18:00 Open
場所:代官山「晴れたら空に豆まいて」
前売 ¥3,000/当日¥3,500 ※予約受付開始 3/29(土)
-----------------
詳しくはこちらを
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 笹野みちるさん独占インタビュー(1)
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.delta-g.org/mt/mt-tb.cgi/316






















コメントする