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レズビアンの世界は隔離されている?

2008年6月17日 10:00 ミヤマアキラ
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[インタビューシリーズ「セクバラ色の履歴書」002

石原有記さんの来た道ゆく道(5)

 

インタビューシリーズ第2弾は、1978年に『薄荷煙草』でメジャーデビューした石原有記(デビュー時は石原祐)さんの登場です(アーカイブはこちら。幼少時の思い出にはじまり、デビュー前のやんちゃな(?)時代、メジャー路線から離れ、銀座のクラブ経営で手腕を発揮した時代、そしてライブ活動を再開した現在に至るまで(もちろんLな経験談も含めて)、じっくりお話をうかがいました(取材・文/ミヤマアキラ)



●周りが女の子ばかりで嬉しい♪

初恋の記憶はあまり定かではないが、確か幼稚園の先生が好きだった。それは母を慕うような気持ちだったと思う。はっきりと恋愛の気持ちを抱いたのは、小学校6年のときに転校してきた女の子に対してだった。公立の場合、当時の女子のランドセルは赤だったが、その子は黒いランドセルを持っていたので、たぶん私立から転校してきたのだと思う。あか抜けた感じの可愛い子だった。家もうちから歩いて10分くらいのところにあって、よくお互いの家に行き来していた。

 

小学校3年生までは、クラスで前から2番目のちびっ子だったけれど、そのころから手足は大きかったので、小学校の高学年にはぐんぐん背が伸び、中学でもまたぐんと伸び、20歳をすぎても伸び続け、170センチになった。膝や肋骨が痛くて医者に行くと、「成長痛ですね。男の子並みの成長度です」と言われた。中学のとき、背が伸びて制服のスカート丈がどんどん短くなっていくのが自分でもよくわかった。当時は女の子が好きなことを薄々意識してはいたが、自分が女性であることに抵抗はなかったので、スカートをはくのは平気だった。

 

女子高ではすでに167センチくらいだったので、運動系では特別扱いされ、周りの女子から注目されているのはわかっていたけれど、だからといって自分が男になりたいとか、男の役を演じようという意識や、トランス系の考え方もまったくなかった。ただ「好きなのは女の子」で、先輩も同級生もみんな女の子ばかりで嬉しい、と思っていた。

 

親にも周囲からも「もっと女の子らしくしなさい」と言われたこともないし、そもそも期待すらされていなかったのかもしれない(笑)。中学のときには水泳をやっていたので髪を短くしていて、肌も日焼けして黒かったし、それで背が高いから、銭湯に行って女湯に入ろうとすると、「ちょっとちょっと僕、そっちは女湯だよ!」と言われることはよくあった。意識して男っぽくしているつもりはなくて、活発なスポーツ少女が受けがちな誤解だったと思う。

 

 

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●女をいじめる男をタコ殴り

小学校のころは、近所の男の子たちを子分にしたがえたガキ大将だった。割り箸で作ったパチンコや銀玉鉄砲みたいな飛び道具を使って、「お前はこっち、お前はあっちな」と率先して配置を決めて、戦争ごっこのような遊びをよくしていた。女の子の遊びはあまりやっていなかったし、自分たちの遊びに女の子が入ってくることは滅多になく、たまに入ってきてもついてこられないからつづかなかった。

 

こどものころから正義感は強いほうで、弱い者いじめは許せなかった。女の子は、本当は芯が強いところもあるけれど、力の差で男の子にいじめられているのを見ると黙っていられず、いじめる男の子をよくやっつけていた。大人になってからもそういう気質はつづいていて、20代のころは血気盛んで、いまからは想像がつかないかもしれないけれど、かなり目が吊り上がっていたと思う。他人のケンカの仲裁に入って、自分が主役になるタイプ(笑)。大阪では単身で弾き語りをやっていたので、ガキだと思われて舐められたくなかったので、実際より年を多めに申告していた。19なのに24と言ってみたり。

 

大阪へ行く前の、横浜にいたとき、繁華街で、ひとりの女をボコボコに殴っているヤツがいた。私はオナベの先輩と二人で歩いてそこに通りかかり、「どうする? 止める?」と先輩と話し、殴っている男はチンピラ風だったけれどあまり強そうじゃなかったので、自分ひとりで止めに入った。「やめなよ、これって弱い者いじめでしょ?」と大人しく言ってみたが、「うるせえんだこの野郎、てめーに関係ねえだろ!」と言われて、瞬間湯沸かし器発動。当時流行のロンドンブーツを履いていたので、それを脱いで男に殴りかかった。そのときに別の知り合いが「まぁまぁまぁ、君は女の子なんだから」と止めに入ってきたけれど、「そんなの関係ないでしょ!」と男をタコ殴り。

 

当時は18歳で、失うものもなかったし、とにかくケンカっ早かった。たとえ警察にしょっぴかれても始末書を書かされる程度で済むという頭もあったから平気だった。ただケンカが見つかって捕まる前に逃げたけど(笑)。

 

 

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●隠す必要もないし、わざわざ言う必要もない

これまで私が付き合ってきたのはほとんどがノンケ(ストレート)の女性だった。とても幸せなことに、男だから女だからということはまったく関係なく、「あなただから好きになったのよ。それがレズビアンという形になっちゃっただけ」と言うひとばかりだった。もともと私はずっとノンケの世界で生きてきたし、去年からMadonnaの手伝いをはじめてから、初めてレズビアンの集まるところに身を置くようになった。

 

そういう私から見ると、女性専門のバーに来るお客さんたちは、「レズビアンの世界は隔離されているもの」と思っている節があるし、「自分はその世界から出られない、出たくない」と思っているように見える。私は確かに女性が好きだけれど、一般社会でずっと生きてきたから男性とも会って話をするし、ミュージシャン仲間にも男性が多いし、仲の良い男性とはハグだってする。コミュニケーションは性別に関係なくおこなう。でも、新宿2丁目の女性客のなかには、お店に男性客が入ってきただけで、避けるようにしてその店から出ていくひとがいる。そういうのを見るととても疑問に思うし、女性のなかのあまり好ましくない部分を見せられることが多い。いくら女らしさから離れてサバサバした男っぽい格好や雰囲気を持っていても、すごくイジイジしているひとが多いんだなと気づき、けっこうショック。

 

性別に関係なく、侠気(おとこぎ)がある胆の据わったひとたちと付き合っていきたいと私は思っている。Madonnaはその点、まーちゃんの人柄もあって、好ましい感じのお客さんが多いけれど、他の店に行ってみるとけっこう辛いものがあった。

 

いまの若い世代のなかには、「カムアウトしてよかった!」というひともいれば、カムアウトできずに悩んでいるひともいる。私自身は、隠す必要もないけれど、わざわざ言う必要もないと思っている。知らせたいひとには言うし、そうじゃない相手にはあえて言わない。たとえば、私の親は戦争に行った世代でもあり、かれらに理解できないようなことを言ってビックリさせるのはやめようと思っている。言葉ではあえてはっきり言わないけれど、私が実家に連れて行くのは女の子ばかり(笑)。親は不思議がっているかもしれないが、自立した娘にいまさらとやかく言うこともないだろうから、特になにも言われたことはない。

 

 

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●与えられた試練に向き合う

私自身の考えでは、自分が女性の身体を持って生まれてきたのは自然なこと。神さまが私に与えた試練のひとつだと思っている。不便さを感じたことはないので試練というほどのものでもないけれど、若いころは特にノンケの女性ばかり好きになっていたので、「もし自分が男だったら振られないですんだのかな」と思ったことはある。それで、男になれるものならなってみてもいいかなと思った時期もある。でも、当時はそれを実行する勇気はなかった。

 

勇気がなくてよかったと、大人になってからは思う。若いころの恋愛でぶつかった性別の壁は、よく考えたら試練だった。試練なら受けなければいけないし、そこから逃げずにくぐり抜けてきたから、いまの自分がいる。女性の身体であることに違和感も支障もないし、男女の範疇ではなく私個人を好きになってくれたら、その気持ちに応えればいいと思っている。

 

2年前、FtMの友人が胃がんで亡くなった。36歳だった。ホルモン注射をずっと打っていて、身体はかなり男性的になっていた。通常、薬物の成分は腎臓に溜まるものらしいが、彼の場合は胃に溜まって、そこから胃がんを発症した。本来なら死ぬべきひとではなかったはずなのに、ホルモン注射の副作用で亡くなってしまった。そういう経緯があるので、もしこれから自分の身近に、身体を変えたいという若い子があらわれたら、私は殴ってでも止めると思う。自分だって、若いときにそう思ったことがあるから気持ちはわかる。生きかたや考えかたはひとそれぞれだからだれにでも私の考えを強制する気はないが、自分に近しい大切な友人だったら、身体と命を引き換えにするような真似はしてほしくない。

 

身体を変えたいと思い悩んでいる渦中にいる若い子には、こんなことをいくら言ってもわかってもらえないかもしれないが、変えたからといってすべてがバラ色になるわけではないし、私自身、変えずに自然体のままこの年まで生きてきてよかったと思っているから、少しでも私のような生き方を参考にしてもらえたら嬉しいし、自分に与えられた試練に向き合ってほしい。

 

 

<つづく>

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