[住まい図鑑]ホームレスの住まい
住まい図鑑 vol.3
ホームレスの住まい
「ホームレス=住む家を持たない人(大辞泉)」と言葉の定義はされど、彼らの多くは住まいを持っている。都市の公園や高架線の下などにあるその住まいは、いじらしく、そしてたくましい。今回は名古屋で出会った3つのホームレスの住まいをご紹介。
■ 住まい概要 ※2002年1月調査時のデータ
住所:3つとも愛知県名古屋市内
[住まいA] 鉄道線路沿いの緑地
・ 空間構成:炊事や物置として使用する部分と、高床の寝室部分の二間からなる
・ 構 造:角材を箱型に組んだ自立型。壁面は薄い板材やダンボール、ブルーシートなどで囲んでいる
・ 住人構成:男性1人
[住まいB] 公園内
・ 空間構成:一間(炊事などは外部)
・ 構 造:公園の木に紐を渡し、ブルーシートをかけた環境依存型のテント。細い木の角柱で補強し、シート内部の壁面はダンボール
・ 住人構成:男性1人
[住まいC] 名古屋城のお堀の下
・ 空間構成:一間(炊事などは外部)
・ 構 造:地面に材木を挿し、それに竹をくくりつけ柱をつくり、ブルーシートなどで覆った小屋。橋の下なので屋根構造は簡略化されている
・ 住人構成:夫婦1組
● 定住型と浮浪型の住まい
ホームレスの住まいは大きく分けて2つに分かれる。今回取り上げるのは、何かしらの構造物を持つ、前者の住まい。
□ 定住型−寝床の確保と私物の保管を主な目的とし、都市のすき間に建てられている。形状や機能からテント型、小屋型、移動式などの分類も可能。
□ 浮浪型−就寝時にのみダンボールなどを敷いて寝床を確保したり、公園や図書館のベンチで眠ったりする。都市というエリアが住まいといえるが、建築物的なものはない。
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● 建築を現場で学ぶ [住まいA] より
ホームレスの人に住まいづくりのポイントを聞いたところ、「床をつくること」との答えが返ってきた。床を張ることで防寒や湿気対策ができ、格段に快適な空間になるのだという。[住まいA]でも寝室には、パレットというフォークリフトで運搬する時に使うおぼんのようなものを敷いて、高床にしている。原始生活の住まいは土間から始まり、次第に床間が設けられたというが、この住まいを見ると妙に納得してしまう。
狭いスペースだけれどもきれいに整頓されている上、作業スペースと休憩スペースも明確に分けられた機能的な住まいだ。住み手がきちんと手を入れて、生活に合った無駄のない空間をつくっている。
● 環境に、季節に、フレキシブル [住まいB] より
公園に多いのが[住まいB]のタイプ。既に立っている木を利用することで丈夫な柱を簡単にゲットし、木と木の間をヒモで結べば水平方向の構造材となる。それにブルーシートをかければ、手軽なテントができ上がりだ。周囲の環境をうまく利用した例といえよう。
簡素なつくりなので、夏の暑さや冬の寒さがダイレクトに襲ってくる。なので、彼らは季節によって住まいを変化させる。例えば夏は開口部を大きくし、冬は壁や床にダンボールや布を重ねて断熱材にする、など。季節の移ろいに合わせ室礼(しつらい)を変える、一昔前の日本の住まいのようだ。
● 手に入りやすい素材でつくる [住まいC] より
多くのホームレスの人は働いている。アルミ缶集めや日雇い労働などで現金収入を稼いでいるほか、採集も大事な生活の糧を得る方法のひとつ。この場合の採集とは、廃材集めや公園のイチョウから銀杏を集めたりすることを指す。住まいの材料となるダンボールや木材などの多くも、そうして集められる。そのほか、[住まいC]で近くに生えている竹を利用しているように、自然物を採る例もある。彼らにとっては、都市の植物は「癒し」ではなく利用価値の高い重要な素材なのだ。私は遭遇していないが、小枝をドーム状に組んで小屋をつくったという技巧派の住まいも報告されている。
● 限られた環境が生むもの
ホームレスにもいろんな人がいるが、慨してその生活は厳しい。雨風や冬の寒さに震え、若者に襲われる危険性に怯える。「難民のようだ」という人もいる。
でも、そこには意外に個性豊かな住まいがあった。限られた環境でのたくましい暮らしの工夫。そこに学ぶものは多いだろう。
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