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PとVの不均衡問題

2008年7月16日 10:00 ミヤマアキラ
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PVの不均衡問題

 

PVと言っても、ペニスとヴァジャイナではない。なにを指しているかは、読めばわかる。タイトルのつけかたがイエロージャーナリズム並みに姑息なのは意図的です。あしからず。


前々回コラムのコメント欄にて、「ノン・ヘテロが対抗的に編みあげた知恵や思索は簡単にヘテロのものにされてしまう」「悔しさ」と、「『レズビアンだけでなく、どんなカップルにも当てはまる』と言われると、笑顔で楽々と巻き上げられているような気持ち」を掘り下げたところ、「『レズビアンだけでなく、どんなカップルにもあてはまる』と相対化されることで、ほかならぬレズビアンおよびその他のノン・ヘテロ・カップル内でまさしくそれが起こっているのだということが、薄められ、再び見えなくされてしまうのではないか」という懸念をわたしが抱いているのだと述べた。

 

なぜこの懸念に行き当たるかというと、非規範的パートナー間の法的保障を考える動きと密接に絡んでいる。具体的なきっかけは、昨年12月にお茶の水大学で開催されたシンポジウム「同性カップルの生活と制度聞き取り調査から考える現在と未来に参加したことから(こちらもご参考に)。

 

この日はシンポジウム前にデルタVプロジェクトを立ち上げるための有志MTGを行ってから会場に向かった。タイミング的な問題も大いに考えられるが、ノン・ヘテロ・カップルについての自分の関心とシンポジウムで中心的に取り上げられた内容との落差に愕然とした。このときの聞き取り調査報告では、パートナー間で起こる暴力の問題についてはほぼまったく触れられていなかったからだ。

 

当日いただいた、立派なA4封筒入りの資料集は、残念ながら探しても見つからない。もしかして、腹立ちまぎれに処分してしまったのかもしれない(うわあ、すみません!)。というわけで、報告内容を詳細にお伝えすることはかなわず(かなりダメだ)、わたしの印象論で述べるしかない(しかも半年以上過去の記憶……)ことをあらかじめご了承いただきたい。

 

この研究プロジェクトは、明らかに同性婚/DP(ドメスティック・パートナー)法制定に向けての政策提言へと結びついている。社会生活や政治と無縁な研究などありえないので、その結びつきは当然のことだし、同性婚/DP法そのものの是非をここで問うつもりもない。

 

ただ、非規範的パートナー間の法的保障制度の必要性を訴えていくためには、パートナー間で起こりうるDV(ドメスティック・バイオレンス)を予防・解決する取り組みも必須のはず。なのになのに、報告者は暴力の「ぼ」の字も、DVの「D」の字も口にしない。もしかして、念頭にすらないの? それとも、権利保障を求めるには、カップルの「負」の部分について言及することは不利になるとみなし、あえて触れないの?

 

これではまるで、「DVは男女間のみに起こるもの」という正しくないヘテロ言説を、ノン・ヘテロにあてはめて再強化しているように思える。唯一、カップル間暴力について触れたのは、コメンテーターの角田由紀子さんのみ。既存の結婚制度は、すでにDVなどで崩壊しかかっている、というようなご発言(必ずしも発言を正確に記述してはいない)で、ヘテロの既婚カップルの現状を述べられた。

 

質疑応答の時間に発言する気力も意欲もわかず、モヤモヤしたまま会場を出る。せめてこのクサクサ感をだれかとシェアしてガス抜きしたい、言いようのない居心地の悪さをなるべく早いうちに言語化したいと思い、某さんを道連れに赤ちょうちんワールドへ。某さんいわく、「カップルがインタビューに応じることは共同作業だからね。ある程度円満なカップルしか調査対象にならない。DVが起こっているカップルがそういう調査に協力するのはまず無理」。いたく納得。インタビューに応じる余裕なんかないはずだし、カップルはその円満さを開示しても、不仲さは開示したがらない。

 

カップルそろっての聞き取りが不可能であっても、せめて単体でインタビューするとか、DV進行形の場合は無理だとしても、せめてex(以前の恋人)とのDVについて調査するとか、科研費出てることだし、やりようはいくらでもあるはずなのになぁ。研究者自体がしんどくなるからだろうか。

 

もちろん、調査報告をしたおのおのの研究者のみなさんには、さまざまなご苦労があったことと思う。円満なカップルを探すだけでも骨が折れるだろうし、円満だからといって調査に協力的なカップルばかりとは限らない。にしても、いくら調査報告とはいえ、たとえばカップル間の家事分担のありかた報告は、ノロケ報告と受け取れなくもない。あるいは、インタビュアーの前では仲良しっぷりを見せつけておいて、ふたりきりになるとじつはどちらか一方がとっても支配的だったりして……と思わず邪推してしまう。

 

非規範的カップルの法的保障を求めるには、DP法とDV法を車の両輪として同時並行的に進めていく必要がある。それぞれ担い手が異なるとしても、だ。けれども、ある意味同化政策的な取り組みをする場合には、「円満で幸せなカップル」「権利保障さえされればなんの問題もない模範的カップル」を強調する路線をとらざるを得ないのだろうか。DP法のPばかりがクローズアップされて、DVVは「ないこと」にされてしまうのだろうか。

 

そんなわけで、科研費など当てにできないデルタGが、「だれもやらないなら自分たちでやりますか」と火中の栗を拾うようにスタートしたのがデルタVプロジェクト。予想どおり、プロジェクトは順調に難航しています(笑)。

 

 

くだんのコメント欄では、ぴかりこさんのご感想をやり玉にあげているように見えたかもしれないが、わたしはぴかりこさん自身を批判しているのではなく、たまたまぴかりこさんから発された言説(「レズビアンだけのことではなくどんな組み合わせのカップルにも言え」る)を取り上げたまでである。つまり、このような所感はほかのだれかからも出てくる可能性はあるし、また、最終的には「どんな組み合わせのカップルにも言え」ることであるはずだとわたしが考えているからだ。

 

わたしの一連の書きものが、どんなカップルにも当てはまるものとして応用されるのはとてもありがたいことだが、その言説を誰がどのように受け取るかによって、わたしがやろうとしていることが逆効果になりかねない。ほかならぬレズビアン当事者が、「そうだよね、レズビアンだけの問題じゃないよね」と言挙げて、自分たちの身に起こっている(かもしれない)課題から目を背けてしまうのではないか、という心配を、わたしはぬぐい去ることができない。

 

ましてや、セクシュアル・マイノリティの生活調査を研究ターゲットに含めている研究者のみなさんには、非規範的カップル間の暴力について自覚的であってほしいと願っている。お茶大のシンポジウムで感じたような無力感は、もうご免である。

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コメント(2)

ゾロ :

初めまして。
前々回のコラムに投稿し損ねていました。
私もつい「どこにでもあることなんですね」と言いそうになってました。でも今日の記事を拝見して納得です。
「どこのカップルにもあること」と言って切り捨て目をつぶるのは、自分の中にある闇に目をつぶること?自分にも思い当たる気持ちが、経験があるから、普遍的なことだと言って隠してしまう、というのかな。同じレベルにしてはいけないけど、「みんなやってるじゃん」という駐車違反のいいわけみたいな?

ゾロさま

コメントありがとうございます。

「だれにでもあること」と認識することは、それが良くないことでもなぜか安心感がありますよね。「自分だけじゃないんだ」って。特別ではなくてどこにでもありふれたことだからといって、改善する必要のない「フツーのこと」認知してしまうのは違うし、そもそもそれが「ありふれた当たり前のこと」ととらえられてしまうのが、なんか変だと思うんです。

駐車違反にしても、好き好んで違反するわけではなくて、近くに駐車場がないとか、あってもめちゃくちゃ高いとか、常に満車で使えないとか、正規の駐車行為のハードルが高い構造が温存されているから、多くのひとは違反とわかっていながらも違反してしまうわけですよね。違反しなくても正規の駐車行為が抵抗なくきちんとできるような構造であれば、だれもわざわざ罰金を課せられたり点数を引かれたりする行為をしないで済みます。

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