同性婚解禁、カリフォルニアに続け?
在米日本人を読者対象とした日系週刊誌「U.S.FrontLine」No.
411(July 3rd)掲載記事「同性婚解禁、カリフォルニアに続け?日本の同性愛者も期待と祝福」をご紹介します。掲載記事のPDFファイルと関連記事(July 1st)もあわせてご覧ください。U.S. FrontLineロサンゼルス支局記者佐藤美玲さん、ありがとうございました。
*週刊誌「U.S.FrontLine」は在米日本人を対象に5万5000部を発行、日米の政治・経済などの最新情報を提供しています。
「ようやく人間として平等に」
カリフォルニアで同性婚が解禁
カップル行列のウェスト・ハリウッド
文/佐藤美玲(ロサンゼルス支局記者)
6月17日午前10時、ウェスト・ハリウッド・パーク公会堂。ウェディングドレス姿の二人の「花嫁」が拍手の中、手に手を取って花輪に彩られた門をくぐった。タキシードやアロハシャツ、思い思いのとっておきの衣装に身を包んだ「花婿」カップルたちが笑顔で後に続く。
「結婚を男女間だけに限定し同性カップルの婚姻を認めないのは違憲である」。カリフォルニア州最高裁が5月に下した判決を受けて、この日、同州で一斉に同性婚が解禁になった。同性愛者の権利運動の先進地で、全米で最初に市議会メンバーの過半数が同性愛者になったウェスト・ハリウッド市でも、歴史的な日に、いち早く結婚証明書を手に入れようとするカップルが行列を作り、快晴の街は幸せムードに包まれた。
「新婚さん」さまざまに
一番乗りは、トリー(31)とケイト(31)。前日午後6時にジャージ姿でやって来て公会堂の外で夜を明かした。「さっきトイレで着替えたのよ」という純白のドレスが良く似合っている。二人は3年前に結婚式を挙げ、生後5カ月の娘もいるが法的には認められていなかった。「これでようやく人間として平等に扱われていると思えるわ」
やはり前夜から並んだジェイ(40)とバンタ(22)は、付き合って3年半の熱々カップル。最高裁判決が出た3日後、ジェイからプロポーズした。「冗談かと思ってノーと答えちゃったよ」と照れるバンタ。10月に家族や友人を集めて式を挙げる予定だ。「結婚というオプションができたことが何より嬉しい」という二人。初めての結婚生活には不安もあるが「1日1日を大切に焦らず取り組んでいきたい。大丈夫だよね」と見つめ合った。
交際41年になるビル(70)とデニス(68)は「こんな日がくるなんて考えられなかった」と感慨深げだ。「今までも結婚していたようなものだけど法律で認められるのは特別。兄弟姉妹やほかの異性愛カップルと、私たちも対等になれる訳だからね」。若いカップルへの結婚生活のアドバイスは「仕事も料理も掃除もすべて50%ずつ分け合うこと」と言うデニス。「なーんて言ってるけど9割は僕がやってるんだよ」と、傍らでビルが片目をつぶってみせた。
「スター・トレック」や「HEROES」で人気の日系3世の俳優ジョージ・タケイ(72)も、21年来のパートナーのブラッド・アルトマン(54)とともに公会堂を訪れ、結婚証明書を受け取った。9月に挙式する二人は会場にリトル東京の全米日系人博物館を選んだ。戦争中に強制収容されたタケイは「日系人がたどった歴史と民主主義を讃える大切な場所で、私たちの絆を祝いたかったから」と言う。350人を招待し、スコットランドのバグパイプの演奏をバックに式を執り行う予定。「人生で最高の日になる。待ち切れないね」
「束の間の幸せ」の可能性も
同性婚の合法化は、04年のマサチューセッツに続いて2州目だ。カリフォルニアではサンフランシスコ市が04年に同性カップルに結婚証明書を発行し、その後裁判で無効とされた経緯がある。今回も、反対する保守派の要求で11月の大統領選に合わせて住民投票が行われ、結果によっては同性婚が再び違法となり、「束の間の幸せ」に終わる可能性も高い。
この日も、少数ながら公会堂の周囲に反対派が集まって「神は罪人を祝福しない」「11月の住民投票が楽しみだ」などと野次った。「激しい反対に遭うことは覚悟している。でもこの4年で世論は変わったと信じたい」とジェイ。ほかのカップルも「今では多くの州民がゲイもレズビアンも同じ人間だと分かっているはず」と希望を口にした。
(U.S. Frontline July 1st掲載)
同性婚解禁、カリフォルニアに続け?
日本の同性愛者も期待と祝福
文/佐藤美玲(ロサンゼルス支局記者)
同性婚が解禁になったカリフォルニアから連日のように届く同性カップルたちの幸せそうな報道映像は、各地に様々な影響を及ぼしている。指輪交換に誓いのキス、ウェディングケーキ入刀に、親族そろっての記念撮影ーー。異性カップルなら当たり前の「晴れの日」を、老若男女の同性カップルが祝う姿は新鮮だ。サンフランシスコでニューソム市長立ち会いの下、最初に結婚式を挙げたのは1950年から連れ添う87歳と83歳の女性だった。映画やお笑い番組に多い紋切り型のゲイ&レズビアン像とは違う彼らの姿は、同性婚の是非をめぐる議論に「人間の顔を与えた」と評価された。
ニューヨーク州は同性愛者に理解が深いパターソン知事の後押しもあり、同州在住のカップルがカリフォルニアなどで結婚した場合にも諸権利を認める方向で動いている。6月30日にマンハッタンで行われたゲイ・プライド・マーチに参加した知事は大歓迎を受け、群衆には結婚をモチーフにした仮装やプラカードが目立った。「カリフォルニアに続け」と全米の同性愛者の権利拡大運動は盛り上がっている。
さて海の向こう、日本の同性愛者たちはこの光景をどんな思いで見ているのだろうか?
◇
大阪府のマユミさんとアキさん(ともに仮名)は一緒に暮らして8年になる。「婚姻届を出していないという点を除けば男女の夫婦と変わりない生活を送っているのに、一歩外へ出ると『同居の女友達』としてしか私たちの関係を表現できない」とマユミさんは言う。「カリフォルニアで私たちと同じ同性カップルが結婚式を挙げる様子が日本のTVニュースに映ったときは本当に嬉しかった。まるで自分たちをそこに見た気がして涙がこみあげてきた。一方で、日本でこんな風に堂々と人前で祝福し合えるようになるには長い時間がかかるだろうと思うと、遠い世界の出来事のように感じた」
アキさんも同調する。「アナウンサーが『米国は進んでいる、同性愛者が身近』などと言っているのが、他人事のようで悲しかった」
◇
日本では90年代から同性愛者の運動が高まったが、同性カップルの結婚や、米国の数州で認められているドメスティック・パートナー制度にあたる権利付与は認められていない。「ゲイという[経験]」などの著書がある作家の伏見憲明さんは、「結婚を認められていないからといって日本ではすごく不自由を感じるという訳ではない」と話す。「社会的に高い代償を払ってまで法的な保障を求めるほどの動機と現実感が日本のゲイ&レズビアンの中にはない。といって米国が進歩的とは言えず、日本にはキリスト教に根ざした露骨な差別や反対運動がないことも大きい」
前大阪府議で議員時代に「カミングアウト」し、昨年参院選に出馬して話題になった尾辻かな子さんは「日本にも厳然と差別意識はある。無関心・無視という形で現れるために、私たちは見えない世間体と闘っている」と訴える。70年代にゲイであると公言してサンフランシスコ市政執行委員となり後に射殺されたハーベイ・ミルクの影響を受けて政治家になったという尾辻さんは昨年、名古屋で公開結婚式を行った。「大切な誰かと一緒に暮らしていくために、人として平等な権利が欲しいと思うのは当然のこと。カリフォルニアの判決を勇気と力にして地道な活動を続けていきたい」
LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の国際権利団体ILGAに加盟する「ゲイジャパンニュース」(望月洋代表)の山下梓さんは、今回の判決を歓迎しながらも「連邦単位で認められない限り、アメリカ国内の同性愛者の間に生じる婚姻権の格差は解消されない。大統領選前にこの判決が出たことで反対派が結束を強め、大統領選にどんな影響が出るか心配だ」と分析している。
(U.S. Frontline July 3rd掲載)
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