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読んでるそばからカラダが疼く

2008年10月26日 16:11 ミヤマアキラ
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中村美亜『クィア・セクソロジー』(2008

ミヤマが中村美亜の名を知ったのは、ほんの2年半ほど前のこと。図書館で調べものをしているときに偶然見つけた『心に性別はあるのか?―性同一性障害のよりよい理解とケアのために』であった。「心に性別があるのではなく、心が性別をつくりだす」という社会構築の考えにいたく同意するとともに、当事者へのインタビュー方法の解説もとても興味深かった。


その後、あちこちのシンポジウムやイベントでご本人の姿を見かけるようになり、友人を介して一緒に食事をする機会を得て、親睦を深めるようになった。美亜ちゃんが担当する大学の講義にゲスト講師として呼ばれたり、あるゼミではモグリで聴講させていただいたこともある。

 

そうこうしているうちに新著が出た。『クィア・セクソロジー―性の思いこみを解きほぐす』である。手にとってすぐ夢中で読了した。アタマ系かカラダ系かでいえば後者のほうが強いミヤマは、美亜ちゃんが本書で紹介するセクソロジー系ワークショップを、「自分もやりたい! 体験したい!」とウズウズしながら読んだ。

 

2度目はメモをとりながらゆっくり精読した(本書の出版記念チャット座談会に備えてのこと。座談会の模様はいずれ『バックラッシュ!』発売記念キャンペーン跡地に掲載予定)。座談会は昨日行われたが、ほかの参加者のかたがたの鋭いご意見を拝聴するに、ミヤマはほんと批判的読みの姿勢が欠落していることを気づかされ、軽く凹んだ。万人が救われる思想や方法論などどこにも存在しないのかもしれないが、本書を読みながら「うんうん、そうそう、ほんとそうよね!」とうなずくばかりのオーディエンスになりさがってしまっていた。

 

本書が優れているなと思うのは、人文系セクソロジーということで、医療や生物学のみならず、人権、政治・社会、思想など幅広い学問分野にわたって言及しつつ、「実学」としてセックス(性行為)の現場で活かされる実践的な知恵にあふれている点である。その一方で、美亜ちゃんのもともとの専門フィールドである音楽学を通じて、音楽を聴く快楽(エクスタシー)体験のエピソードなどに触れ、必ずしも行為としてのセックスだけが(性的)快楽をもたらすものではない、ということも語っている。

 

本書は保守的なセックス観に凝り固まっている一般のひとびとへの啓発を主な目的としているため、「セックスによる解放」論的なトーンが前面に出ているが、本書のラストでは松浦理英子『犬身』の一節を引用しながら、「セックスからの解放」をも示唆している。

 

「セックスは、意識しようとしまいと、そもそも他者の<からだ>に対する権力の行使である。働きかけるものが存在し、それを受けるものが存在し、必然的に支配/被支配関係が成立する(p182)」というくだりには、ドキッとせざるをえない。しかし、自分のなかにある支配/被支配欲を否認するのではなく、それらを認めたうえでなければ、性愛がらみの支配関係や暴力を慎重に遠ざけることはできないのではないかと思う。

 

政治レベル、国家レベルにも通じる話として、著者はこう述べている。「(性教育やセクソロジーが広まらないのは、)性教育が避妊や性感染症予防や、性暴力や性の多様性への理解を深めることによって、私たち一人一人の生き方を個性的で豊かに変えるように、それとまさに同じ理由で、私たちの生き方を国家や巨大資本がコントロールするのを困難にするからだ。性教育は、私たちの『生き方』を規定する重要な要素であり、それは取りもなおさず、国家のあり方や、その舵取りをする政治や経済活動と不可分だからである(p172)」。「近代的国民国家を維持しようとする立場の政治家や官僚にしてみれば、私たちの『性』は、いまだ人口問題以外の何ものでもないのである(p174)」。

 

政治家や官僚でなくとも、「同性愛は子孫を残さないから不毛である」なんてことを真顔で述べるひとたちはいまなおたくさんいる。よそのカップルが子孫を残そうが残すまいが、あなた個人にコミットされるいわれはないよと思うが、「性愛=人口問題」という公式が無自覚に共有されており、要するに一般市民による相互監視体制が歴然と築かれているということなのだろう。

 

ところで、今後も美亜ちゃんは大忙しである。118日(土)には広島で行われるクィア学会第1回大会シンポジウム「日本はクィアか?」に、竹村和子さん、田崎英明さんとともに登壇する。129日(火)からはパフスクール講座「性の呪縛をとく」を担当。日本で唯一といっていい人文系セクソロジスト中村美亜の動向に、ますます目が離せない。

 

【参考URL

『バックラッシュ!』発売記念キャンペーン跡地

パフスクール講座「性の呪縛をとく」

クィア学会第1回大会シンポジウム「日本はクィアか?」

 『クィア・セクソロジー』ブログ

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