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いちばん近くて遠い他人

2008年12月 7日 15:09 ミヤマアキラ
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「そして、私たちは愛に帰る」

 

今回はふぇみん1025日号に掲載された映画評のご紹介です(編集部の承諾を得て掲載しています。また、一部修正しています)。一般公開は今月27日から。L的にも素敵な見どころアリです。

「なぜ、トルコとドイツが舞台なの?」

  国際情勢や現代世界史に関心の高い人でない限り、本作を鑑賞するにあたって、こんな疑問が浮かぶに違いない。かくいう私がそうだった。

 1960年代、西ドイツ(当時)は労働力不足を解消するため、トルコから多くの移民を受け入れた。かれらが本国から家族を呼び寄せて定住した結果、現在のドイツには270万人のトルコ移民たちが暮らしている。

 そのような労働政策が実施されるなか、監督・脚本のファティ・アキンは、トルコ系移民二世として、1973年ドイツに生まれた。トルコとドイツ、二つの文化背景を持つ彼の映画が二国をまたいで撮られるのは、彼にとっては当然のこと。

 主な登場人物は三組の親子。息子を男手一つで育て上げ余生を娼婦イェテルと暮らすトルコ移民の父アリと、大学教授を務める息子ネジャット。娘の学費を捻出するためトルコからドイツへ出稼ぎし娼婦となった母イェテルと、反政府活動家としてドイツへ逃れた娘アイテン。愛する人を救うため単身トルコへ向かうドイツ人学生ロッテと、娘の身を案じながらもうまく愛情を伝えられない母スザンヌ。

 親子はいちばん近くて遠い他人と言われるとおり、三組それぞれの親子のあいだにはすれ違いばかりが起こり、お互いの距離はどんどん遠くなる。しかし、偶然の出会いや導きによってトルコとドイツ2000キロの距離と血縁を越えてつながりあい、喪失の痛みと後悔の念を乗り越えていく。

 物語のなかで、一人の母と一人の娘が、じつにあっけない死を遂げる。だれかの死をもって、生きている者同士のつながりが回復されていく。だが、取り返しのつかない喪失による気づき、回復された心のつながりを、手放しで賞賛することは難しい。再生と希望の光の陰に横たわる殉死者の存在を忘れるわけにはいかないからだ。

 舞台はドイツ・ブレーメンにはじまり、トルコの首都イスタンブールへと移る。どちらも重厚な歴史と文化の蓄積を感じさせる街並みであり、観ていて息苦しさを覚えるほどだ。しかし、最後にはトルコの海沿いの小さな町フィリョスへ移る。視界が一気にひらけ、白い砂浜と青い海がじつにまぶしく、まるで楽園の風景だ。

 この映画の原題「The Edge of Heaven」のとおり、そこは“天国のほとり”である。ネジャットはこの砂浜で、釣りに出かけたアリの船が戻るのを、かつて見限った父を待っている。おそらく、二人の殉死者の魂とともに。アリの船はまだ見えないが、ネジャットは待ち続ける。

 

●公式サイト「そして、私たちは愛に帰る

 

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