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ブッチにまつわる9つの質問

2009年12月 7日 11:12 ミヤマアキラ
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クィア学会パネル部会での報告エントリに関して、とある読者のかたから9つの質問をいただきました。ご本人の了解を得て、その質問とわたしの応答を掲載します。大元の報告エントリをお読みでないかたは、以下からどうぞ。

 

ブッチ・レズビアンにとって「女である」とはどういうことか?(前編)

ブッチ・レズビアンにとって「女である」とはどういうことか?(後編) 

(1)日本に「ブッチ」という自覚をもっているレズビアンはけっこういるのでしょうか。関西で暮らしていると「タチ」と言うのが一般的で「ブッチ」と使っている人はほとんど見かけません。東京にはけっこういますか。タチとブッチは違う概念ということでしょうか。

 

統計をとったわけではないのでどのくらいいるかはわかりませんが、身近なところでは何人かいます(レズビアンかどうかにかかわらず)。ブッチ/フェムをタチ/ネコの意味で使っているかたがたってけっこういるみたいですね。パネル部会での質疑応答でも、「ブッチではなくタチという表現を使います」と言ったかたがいました。が、タチ/ネコは厳密に言うとトップ/ボトムと対応しているはずです。なので、「タチとブッチは違う概念」として使用しました。ブッチ/フェムは外見や態度・仕草を含めたパブリックな表象を指すもので、タチ/ネコは性行為における役割の違いを指すものととらえています。

 

(2)ブッチにとって女であることのインタビューが掲載されていましたが、なんとなく全体的に女子は嫌だけれど抵抗するのを諦めた、のような意見が多いように思いました。抵抗をしなくなっただけで、女であることや女身体を楽しむようにはなりきらない場合が多いのでしょうか。

 

女子は嫌だけれど抵抗するのを諦めた」というのは1人ですね。もう1人のかたは、身体違和があったわけではなくて、メンズものの服を着用する場合には、胸が出ていると似合わない感じがするから嫌だった、というご意見です。わたしもこのかたとほぼ同じです。女であることを積極的に楽しむという点では、「メイクをして化ける楽しさ」を覚えたかたもいますし、布ナプキンを使用するようになって月経ライフを楽しめるようになったかたもいますし、恋人との性愛行為を通じ、恋人に愛されることによって自分の身体を好きになったというかたもいます。

 

あと、お付き合いする相手によって、ブッチになったりフェムになったりするかたもいますね。以前はブッチ(フェム)だったのに、久しぶりに会ったらフェム(ブッチ)化してて、まったくのアカの他人になってしまったかのように見えて、ちょっとびっくりしました。ファッションレベルのみの変化ではないように思いました。

 

(3)同じよな質問ですが、FTMを嫌悪するブッチはどのようにミソジニーと折り合いをつけながら男性的な容姿をしたり猫をリードするのでしょうか。男なんて嫌い、女を捨てて男になりあがる奴も嫌い、バカなふりしなきゃいけない女も嫌い、第三の性って言うのも逃げな気がする、嫌いな胸も諦めた、なんだか八方ふさがりに感じられますが、どこらへんに着地しているのでしょうか。

 

わたしがリサーチした範囲の話なのでとても狭いですが、レディースでも極力フェミニンに見えない色柄デザインのものを着用するかたもいます。メンズものを着用するのは男性的に見せたい意識からというよりも、機能性や着心地の好さを重視しているというご意見があります(もちろん女性的なボディラインを見せたくないと思っているかたもいるでしょう)。(1)で述べたように、「ブッチ」と「タチ」は同じではありませんから、必ずしも「ネコをリード」するわけではありませんし、「ネコをリード」するのに必ずしも「男っぽさ」を要するわけでもないと思います。

 

どこらへんに着地」というのは、どうお答えしていいのかわかりません。ヘテロ女性がベオグラードにいるとしたら、FtMがアゼルバイジャンで、レズビアンのフェムはウラジオストック、ブッチはコートダジュール、というふうに例えればいいのでしょうか(各地名は単なる思いつきで、なんの意図もありません)。そもそも着地するのが望ましいのか、着地しなければならないものなのか、「着地」とはなにを意味するのかわかりません。意味がわからないながらも、「着地しない」という着地のしかたもあるのではないかと思ってみたり。

 

(4)GIFが流行る中で、ブッチがブッチでありつづけることの困難があると思います。ブッチが女性性を苦なく有したままであるための、何か工夫やサポート、たくらみがあれば教えてください。

 

GIFって画像ファイルですか? ってGIDのタイプミスですよね。茶化してすみません。

 

ブッチがブッチでありつづけることの困難」というのは、他者から「あなたGIDでしょ」と思われる可能性のことでしょうか。もしそう言われたら「違いますよ」と答えればよいだけだと思います。あとは、勝手に「女性」のくくりに入れられたとしても、向こうの想定している「女性」とこっちが想定している「女性」は違うから、と思っておけばいいのではないでしょうか。「どう違うの?」と聞かれてもあえて答えないという戦略で。むしろ「あなたの言う『女性』ってなんなの?」と雪隠詰めする方向で。聞くだけ聞いて、「ふーん、そうなんだー。わたしは違うけど」って。

 

それでもブッチがブッチでありつづけること」が「困難」なら、さっさとやめちゃえば? と思います。

 

(5)政治的に女性を選んだひとたちについて、大変期待が高いところなのですがあまり活躍を拝見しておりません。どこらへんに行けば活躍を見れますか。例えばFTMになろうとしている人への「女子でいいじゃん」啓発活動などです。レズ業界でのブッチ万歳運動などです。

 

例に挙げられているような活動をしているかたは、不勉強ながら存じ上げません。ブッチ人口をもっと増やそうという積極的な動きがあってもよさそうなものですが、わたしが知る限りのブッチなみなさんは、啓発・勧誘活動にはあまり熱心ではないようです。奥ゆかしいですね。かくいうわたしも啓発活動をする気はありません。「あなたたちの邪魔はしないから、こっちの邪魔もしないでね」という感じです。

 

(6)デルタの方で性の多様性をうたうにも男尊女卑が強くてそれどころじゃないという感じ(?)みたいな書き込みを読みました。まぁフェミニズム頑張れという結論になりがちですが、同じ様にお考えですか。フェミに期待するトピックなどあれば教えてください。

 

個人的には、男尊女卑(性差別)の撤廃と性の多様性をうたうことは特につながっていません。「性の多様性」という言葉もなんだか流行語のように用いられすぎて意味が劣化しているというか、内容がすでに固定化している気がして、どれほどの多様性だよ、ペドフィリアとかネクロフィリアとかズーフィリアとかも想定してるのかよ、と思います。多様性って言いながら自分が認められたいだけだろうよ、みたいな。

 

フェミニズムはわたしにとって「頑張れ」とか「期待する」という、沿道から旗振って応援するような「外部」のものではなくて、それを使ってどう考えるか、なにができるかというツールなので、ご質問に適した回答は不可能かと思われます。

 

(7)男尊女卑の世の中を変えるためにフェミ(割と固め)と手を組むのが早いと思うのですがイマイチうまく連携できない先入観があります。ずれを感じるというか。そのようなフェミに対するとっつきにくさ、など感じることはありますか。もし感じることがあればそれを解消するにはどうしたらいいのでしょうか。抽象的ですみません。

 

フェミにもいろいろありますが、主流と思われるヘテフェミに対しては、わたしもとっつきにくさや相容れなさを感じることがあります。それを解消する良き知恵があれば(そしてわたしに使える知恵ならば)、わたしもぜひ知りたいです。

 

ただ、ヘテフェミをカテゴリで見ると気が遠くなりそうになりますが、嗅覚で慎重に見分けながらピンポイントでお話ししてみると、たとえばレズよりもレズの置かれた状況を鋭く見抜いているかたがいたりします。諦めずに、地道なアプローチが大切かと。

 

(8)クィア業界で今一番美味しいがんばり所がブッチだと思うのですがそのような動きは出てこないでしょうか。美味しいと感じるのは一番見えなくさせられているところのような気がするからです。シェーンよりもブッチブッチしたレズが、男らしさを嫌うフェミとうまく連携して、女性身体の肯定、女性エロの賛美を進めていくのはかなり美味しいと思っています。

 

たとえば井脇ノブ子さんって、あの超絶インパクトなビジュアルのおかげで逆に見えなくなっているものがありますよね。セクシュアリティもなにもかも謎すぎて、クィアなんだかどうなのかもよくわからないのですが(ブッチをはるかに超越している気がする)、あのかたが地元有権者の支持を得て議員になったということは、なんらかの成功例なのではないかと思ったりします(井脇さんに関してはどういうわけか、なにかを言い切るのがすごく躊躇される)。

 

井脇さんから学ぶことはきっとたくさんあると思うのですが、どうしても真似しようとか後に続こうという気がしません(っていうかだれにも真似できないと思う)。わたし自身は悪食なので、残念ながら美味しいものには縁がないようです。

 

(9)川村かおりの若い頃はあれはブッチ状態でしょうか。

 

微妙なところですね。川村かおりがデビューした80年代後半は、まだ若干「ハウスマヌカン」的刈り上げヘアスタイルとかモード系ユニセックスファッション流行の残滓がありましたよね。当時の刈り上げやユニセックスファッションがイコール「ボーイッシュ」「ブッチ」というわけではなかったと思います。一方、土屋アンナはロン毛ですが、ブッチだなあと思います。

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コメント(4)

nosuma :

…判らなかったら直接、本人に質問してください。こちらの心情やスタンスを勝手に憶測だけで捕捉されても困ります。
此処はあなたの城ですから、ワタシが特に突っ込み入れるまでもないと無用な遠慮が仇になったようです。遠まわしに何か?言われるのは(セクシュアル関係なく)苦手ですので。。。ワタシはブッチではないので(どこかで内包する部分はあっても)、その戦略はどうのと言う質問はスレ違いですけどね。。。

>nosumaさま

なにか勘違いをされているようですが、ここに挙げた質問は、実際に某所であるかたからいただいたものであって、わたしの勝手な憶測で捏造したものではございません。

nosuma :

質問を捏造なんて言ってませんよ。相手がワタシのコメントから誤読して引用した文章をそのまま載せるのはどうかと言っているだけです。
ワタシのコメントの意味が判らなければ先に質問をどうぞと言っただけです。ワタシが「第三の性」を名乗ろうと名乗らないからと言って、他の方が名乗ってはいけないなんて言ってませんし、男尊女卑が邪魔でセクシュアルを名乗れないなんて言ってませんよ。それで、そちらの論文と繋げて、八方塞と読んだ方の文脈と何のつながりもないと言っているんです。

「ブッチ」のカテゴリーでどんな戦略を取ろうとミヤマ氏のご勝手ですし、その論文が成功しているかどうかは武士の情けならぬブスの情けで口を挟む気は、
ないですが、個人的には…おっぱいと闘って「おっぱい」に負けた木っ端侍の話と言うのがワタシの感想です。w

「第三の性」に関して言えば、数字をつけて男1女2○○3なんて単純化しても4,5,6…と無限後退しそうだから、アホラシイ感が先に立つだけの話です。その他、此処でだらだら書いても長くなるだけですし、また別の場所でもまとめます。

>nosumaさま

>相手がワタシのコメントから誤読して引用した文章

おそらく(6)の質問のことをおっしゃっているのだと思いますが、わたしは、質問主さんがnosumaさんのコメントを受けてご自分の疑問を提示されたのだととらえました。そこには、nosumaさんがおっしゃるように「誤読」があると思いますが、「誤読」のなにが問題なのか、また、「誤読」に乗っかったうえでその質問に応答することのなにが問題なのか、わたしにはわかりません。

質問主さんはnosumaさんを「代弁」して質問したわけではなく、「誤読」したうえで質問しているので、nosumaさんのオリジナルコメントから乖離したものと、わたしはとらえていますので、そこでnosumaさんに「質問主さんはこうおっしゃっていますが、nosumaさんはいかがお考えですか?」と問う必要は感じませんでした。

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