そんならわたしは『平成オマンコ塾』で
本当なら新年最初のエントリは川口有美子『逝かない身体 ALS的日常を生きる』の書評にしようと思っていたのですが、読むうちに考えるうちに、これまで自分が直面してきた「ひとの死(の手前の生)」について想起させられ(まぁ想起させられるであろう本なんですが)、こりゃ書評じゃなくなっちゃうわと思い直しつつ書き直しつつで、まだアップできそうにありません。とにかくよい本なのでみなさん読んで!
という、まったく無芸(大食)なアピールでいまは逃げておきます。
さて、なにから書けばいいのかもわからないくらい頭のなかが混沌としていますが、事の起こりは1月4日、WAN(ウィメンズ・アクション・ネットワーク)のトップページに、「WANはウェブマスター業務の外注化を撤回せよ!」という題名の記事が挙げられました。自団体を糾弾する内容の記事を自サイトにアップするなんて、WANってすごいオープンマインド! 太っ腹! と感心したのもつかの間、ほんの5時間ほどで削除されました(当該記事は現在こちらで読めます。削除理由についてはこちら)。なお、この記事は1月8日にWANサイトに再掲されましたが、あっという間に削除されました(魚拓)。
関西の女性研究者たちが中心になって立ち上げたというWANですが、設立大会に出席した山口智美さんの報告によると、「(運営側が)自分たちについて言及する際、「IT弱者」という言葉を連呼していた」ことへの懸念として、「本来、だんだんと最初は「IT弱者」だった人たちもその「弱者」状態から脱してくる予定だったのだが、その人たちはいつまでも「弱者」の地位にとどまり続け、結局同じ「できる」役割の人たちが実質上の作業を担い続け、「自称弱者」たちにやり方などを教えようとしてもダメで、責任をもとらされる立場になってしまい、結局疲れ果てたり、とてつもない問題を感じてやめざるをえない状態になっていく」ことを指摘しています。
そして今回、山口さんの懸念が労働争議という形で現実のものとなったのでした。山口さんはこの問題が発覚した2日後には、早くもWANの労働争議と、非営利団体内での労働の搾取問題というエントリを挙げています(新聞記者もびっくりの機動力)。というか、発起人の遠藤礼子さんを知るひとたちにしてみれば起こるべくして起こった争議であり、(遠藤さんが雇用された時点で)こうなることはとっくに予想されていたのに、そもそもなぜWANの理事たちは遠藤さんをウェブマスターとして採用したのかいささか謎であるとの声もありました。だれを雇おうと健全かつ誠実な労使関係を構築すべきなのは当然ですが、理事たちは遠藤さんのバックグラウンドを知らなさすぎですし、労働運動に取り組んできた遠藤さんに対して不当な労働条件の変更を課すとは、迂闊の上塗りがすぎます。
しかし、これがもし労働運動に明るくないひとの身に起こったことだとしたら、問題が表面化するどころか運営側の盛り上がりの陰で泣き寝入りを余儀なくされていたかもしれません。労働問題への取り組みを積み重ねてきた遠藤さんだからこそ、運動(非営利)団体で起こっている不当労働や搾取の実態に光を当てることができたのだと思います。
それとは別に、というか実はめちゃくちゃ関連しているんですが、13日に行われるジェンダー・コロキアムがWANとの共同開催によりネット生中継されるとのことで、twitter界隈でざわついておりました。その日はわたしの記念すべき不惑の誕生日でして、それをぼそっとつぶやいたところ、「あ〜、じゃあ行っておきましょうか〜」みたいなことになり(じゃあ、って言ってもなんの脈絡もないのですが)、せっかく行くからにはなんか突っ込みたいよね〜、でもどうせなにをどう言っても「今日のテーマとは関係ありません」みたいに流されて、オーディエンス(推定上野ファン)からは白い目で見られ、無駄な顰蹙ばかり買ってますます貧乏になるだけだろうし、下手に発議して労働争議に悪影響があっても迷惑な話よね〜、だけど一応わかる範囲のことは情報収集しておきましょうか〜、という具合に、最初からきわめて後ろ向きな姿勢で臨んだのでした。
そもそも「男(の子)に生きる道はあるか?」なんてテーマはわたし的にはどうでもよくて、とりあえずWANとジェンコロの共同開催っぷりを目撃しにいくという二重のアウェー感を両肩にひしひしと担ぎつつ本郷へ向かったところ、はじまった会は労働争議どころではない失望、絶望、虚脱感のるつぼ。そのときの様子はtummygirlさんの笑おう、憤りと皮肉と拒絶とをこめてをご覧ください。わたしが追加言及することはなにもございません。あの場を共有したアウェーなかたがたにとってはおぞましいトラウマを再現しつつエンパワメントが得られるという、両義的ながらたいへん秀逸なエントリに仕上がっています。あの場にいらっしゃらなかったかたはぜひ動画をご覧になりながら、今回のジェンコロがいかなる地獄絵図を描いていたかを検証し、トラウマを共有していただければせめてもの幸いです。
くだんの労働争議については、発起人の遠藤礼子さんにも直接取材をさせていただきましたし、短期間のあいだではありますがあちこちから情報やご意見をちょうだいしました。暫定的にそれらの情報を集約すると、ウェブ事業をおこなううえで「IT弱者」であることはすなわち「経営弱者(音痴)」でもあるわけでして、立場の弱いひとたち(とりわけITスキルのある“若い”ひとたち)がその音痴っぷりに振り回されている、ということのようです。さらに「おんなのうんどう」となると「シスターフッド」「女の連帯」なるマジックワードが発動し、「仲間意識」が先立って「雇用者/被雇用者」という労使関係がうやむやにされやすいようでもあります。雇用者側は特に搾取している自覚も不当な扱いをしている意識もなく、ただ無邪気なだけみたいですが、そうだとしたら、この無邪気さが逆に厄介だろうなと思います。訴える側とは現状認識がズレまくるでしょうから。
さて、そんな無邪気な(決めつけ)WANの仲間たちとの団体交渉が1月20日(水)18時より、WAN事務所(京都市下京区)で行われます。組合側で参加したいかたはユニオンWAN uwan(at)precariato.info((at)→@)までご連絡を!
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ご注目ありがとうございます.
ミヤマアキラさんはじめ,みなさまに注目いただいて,私が全部説明しなくていいのは本当に助かります.「そもそもなぜWANの理事たちは遠藤さんをウェブマスターとして採用したのかいささか謎である」そうですよね!というか,いささか,というより,むっちゃ謎!
それから,お誕生日おめでとうございます(ました)!年に一度のお誕生日にこんな催しでお疲れさまでした.疲れ損にならずに,ちょっとは楽しいことにつながるといいのですが!
「迂闊の上塗り」を重ねるWANに対して私(たち)は何ができるんでしょうか?あの人たちは何しても変わらないと,私は思っていますが,あの人たちとは別に,創造的で意味のあることが何かできるんじゃないかなと,ピザ焼きながらいろいろ考えてます.考えは行ったり来たりですが,ピザは焼けるから,まあそれでいいか.ピザ焼くのもなかなか奥深いです.
団交どうなるんでしょうね.予想するけど,きっとそれは裏切られます.またブログで報告します.
>遠藤さん
コメントありがとうございます〜。
メールでお知らせしようと思っていたのですが後手後手ですみません。
>「迂闊の上塗り」を重ねるWANに対して私(たち)は何ができるんでしょうか?
個人的にはWANにはほとんど関心がなかった(いまもほとんどない)のですが、ただでさえウェブにおけるフェミのプレゼンスが弱いのに、WANによって逆にマイナスになってしまうのは困ったことだなぁと思います。できればしっかり立て直しをはかっていただきたいものだと思いますが、はてさてどうなることやら。
団交に参加できないのは残念ですが、陰ながら応援しています。WANだけの問題として収束させるべきではないと思っています。