「シェルターシンポジウム 2007 in 東京」に行ってきました
「シェルターシンポジウム 2007 in 東京」に行ってきました
——セクシュアル・マイノリティの分科会を担当して
堀江有里
2007年11月23日(金)〜25日(日)、「DV根絶国際フォーラム」と「第10回全国シェルターシンポジウム2007」が同時開催された。会場は、東京の幕張メッセ国際会議場と国際能力開発支援センター(OVTA)。主催は、NPO法人全国女性シェルターネット。3日間の参加者は、主催者発表によると、のべ2,500人。
前年の「第9回全国シェルターシンポジウム2006 inはこだて」に引きつづき、分科会「セクシュアル・マイノリティのDV被害者支援」が開催され、わたしは発題者として参加した。その概要のご報告と感想を述べておくこととしたい。
まず昨年のことだけれど、さまざまな人々に出会うことができて収穫ではあったが、驚くことが結構、多かった。というのは、自己紹介をする場面で「わたし、レズビアンなんですけど、ピア・サポートのなかで、暴力の話って、やっぱりあるんですよね」と言うと、こんな反応が多く返ってきたからだ。
「え? 同性のあいだにもDVって、あるんですか?!」
つまりは、「DV」と言えば、男性から女性への暴力のことで、それ以外のことは想定にはない、ということらしい。もちろんすべての人たちがそう考えているわけではないのだけれど、多くの人々にとって、“想定の外”にあって、認識すらされていない、というのが現実なのではないだろうか。
◆セクシュアル・マイノリティのDV被害者支援
11月24日に開催された分科会の参加者は20名。最初に自己紹介から開始したのだが、何人かセクシュアル・マイノリティ当事者たちの参加もあり、多彩なメンバーだった。
前年に引き続き、「セクシュアル・マイノリティのDV被害者支援」を担当したのは、NPO法人フェミニストサポートセンター・東海(FSC東海)。当日の趣旨説明によると、以前にほかの団体が「マイノリティ」の分科会を設定し、そのなかでセクシュアル・マイノリティの置かれている状況が紹介されたこともあったが、実際に相談のケースが散見するなか、独自にもつ必要があるのではないか、という声から分科会が設定されることとなったらしい。
しかし、ひとくちに「セクシュアル・マイノリティ」と言っても、じつに多様である。ということで、今回は、午前と午後の二部に分け、(1)発題「同性間パートナーシップとDVの諸課題——レズビアンの立場から」(担当:堀江有里)、(2)「セクシュアル・マイノリティの相談の現状分析」(担当:北仲千里さん/FSC東海)の2本立てになった。それぞれ簡単にご紹介しておきたい。
まず、午前の部「同性間パートナーシップとDV」と題して、非異性間のパートナーシップとDVについての発題。じつは、わたしはシェルターとかDV問題に、日常的にかかわっているわけではない。1994年からキリスト教のセクシュアル・マイノリティのピア・サポートにかかわってきたのだが、そこで触れてきたケースや、身のまわりの友人たちのケースについて問題点を抽出し、お話しすることとなった。この点、お断りしておきたいと思う。
以下のような点を、特徴的なこととして挙げた。
・非異性間における関係のトラブルは、周囲へのカミングアウトの問題もからんでくるので、第三者が介入しての解決が困難である。
・そのため、関係自体が、ときに閉鎖的にならざるをえないこともある(カップルのなかでさまざまな暴力の問題が起こっても、周りに相談しにくいことがある。また相談業務機関やシェルターなどに話す場合にも「拒絶されるのではないか」「偏見の目で見られるのではないか」という不安が生まれる場合があるし、実際に対応してもらえないケースがある)。
・非異性とパートナーシップを育んでいること自体について、当事者が自己肯定できていない場合がある(同性愛嫌悪をもっている場合がある。「わたしたちの関係は“不自然”だから、“異常”だから、うまくいかないのだ」と思い込んでしまう場合がある)。
また、これらに対して、今後の課題として以下のような点を挙げた。
・まずは何よりも、DV被害者が“これはDVだ”と気づける情報、気づいた場合に話をできる場の確保。とくに相談できる場やシェルターが増えていくためには、まずはセクシュアル・マイノリティに関する研修が必要。
・DV法の改正。現在、異性間での暴力の問題しか取り扱えないので、「配偶者等」の明記と、そのなかに非異性間パートナーシップの事例を盛り込むことが必要。
・しかし、まだ非異性間のDVはなかなかその実情が把握できていないので、何らかの実態調査を行う必要もある。
そして午後の部は、2つの実態調査の報告と分析。a)内閣府の調査から、b)今回の事前調査から、という2本立てで、フェミニストサポートセンター(FSC)東海が担当。
まず、2004年度に内閣府が実施した「配偶者等からの暴力に係る相談員等の支援者に関する実態調査」の結果報告からの抜粋からの紹介。すでに公表されているが、民間の相談員や施設長を対象としたものである。そこに「性的少数者である被害者からの相談への対応」という項目があり、こんな数字が出ている。
a)対応している 13.4%
b)対応したことはないが、相談があれば対応できる 49.3%
c)対応したことはなく、相談が遭っても対応できない 35.0%
内閣府の報告書では、a)とb)とをあわせて「6割強が性的少数者からの相談に『対応できる』と答えている」と評価しているが、その詳細をみていくと、「特別な体制を整えているわけではないが、相談員等が工夫して対応している」=74.6%、「性的少数者からの相談に対応している他の相談機関を紹介している」=20.5%、という数字が出ている。わたしには、「他の相談機関を紹介している」が“対応できている”と評価されてしまうのは納得がいかない気もするが、これが実態だということだろう。
また、もうひとつは、全国47都道府県に設置されている婦人相談所を対象に、FSC東海が調査したものだ(2007年10月31日〜11月15日実施/回収率80.8%)。項目としては、「同性間で生じた親密な関係における暴力のケースについて…扱った事例」があるか、また、「相談者の性別にあいまいさがある場合」の事例などをたずねるものが含まれる。詳細については、実施したFSC東海から、近々公表されると思うが、実際に、いくつかの婦人相談所でケースが上がってきているということが明らかになった。つまりは、たとえば、トランスジェンダーがDV被害を受けている、とか、非異性間のDV被害で相談所に連絡した人たちがいる、などのことが明らかになったわけだ。
◆今後の課題
これらを踏まえて、意見交換などをすることとなった。そこから具体的なアクションへと結びついていく提案が生まれたわけではない。しかし、(1)すでにいくつかの相談業務やシェルターにかかわっている人たちのあいだでは取り組みが行われてきているし、それらをネットワークとしてつなぐことの必要があること、(2)相談窓口やシェルターに携わる人々に、異性愛や性別が男女二元論に合致している(かつ性別違和をもたない)ことをDV問題に取り組むうえでの前提とする考え方にクエスチョンをもってもらう必要があること、(3)DV法のつぎの改正に向けて,性的少数者の置かれた状況についての認識を高めるために動いていく必要があること、などを確認することができた。
何をどのように、という具体的な事柄については未知数ではあるけれど、とにかく、声を挙げ、ネットワークをつくっていくことの大切さを痛感して帰ってきた次第である。
考えてみれば、どこにでも暴力の可能性は存在するわけだけれど、最初に述べたように、DVといえば、“男から女に向けての暴力”として強調されてきた経緯もある。DVをそのように語る場では、女も暴力を奮うのだ、という、ちょっと考えたら“あたりまえ”であるはずのことも、落とされていってしまう。たとえば、レズビアン・カップルのあいだで起こる暴力の問題についても、そのような大枠のDV関連の運動のなかでは、連帯しにくくて、相談できる機関も限られてしまうわけだ。
そして、認識されてないということは、暴力のただなかにいる人たちも、なかなか第三者に相談しにくい現状があるということだと思う。語る場がない。これは切実な問題なのではないだろうか。少しでも、このような現状を変えるために、できることをやっていくしかない、と思う。
【参考資料】
DV根絶国際フォーラム・第10回全国シェルターシンポジウム2007
(NPO法人 全国女性シェルターネット「女性のためのDV相談室」より引用)
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