レズビアンカップルにおけるドメスティック・バイオレンス(DV)
「女性は平和な生き物だから争いを好まない」というのは、厳密には正しくありません。平和とはいったいだれのための平和なのかと考えると、自分自身が平和であるために、パートナーや周囲をコントロールしようとすることは充分ありえます。争いを好まないからといって、つねに争いを避けて通れるわけではありません。「好まないこと」と「争いを防ぐスキルを持っていること」は別物です。
過去においてあなた自身が暴力の当事者になったことがないか、現在渦中に置かれていないか、将来当事者になる可能性はないか、この機会にじっくり検討してみてください。
●女性同士のカップルで起こっている暴力に関しては、当事者も非当事者も、以下のような思いこみや先入観を持っている傾向があります。
・女性同士だから暴力などありえない
・暴力が起こっているとしても、お互い対等にケンカしているに違いない
・身体の小さい側が大きい側に暴力を振るうことはありえない
・お酒に酔った勢いで暴力を振るうのだから、暴力の原因はお酒にある
・パートナー/自分は言葉で脅したり罵ったりはするが、手をあげたことはないので、これは暴力ではない
・いつも相手を怒らせている自分が悪いのだから、自分が気をつければ問題はない
・そのひとには自分しかいない/自分にはそのひとしかいないから、どんなに辛くても逃げ出すわけにはいかない
・レズビアンカップル間で暴力を受けているひとが援助を受けられる場所はない
DVは異性間のみで起こるわけではありません。ある統計によると、同性・異性にかかわらず、すべてのカップルの約3割にDVが起こっているとされています。暴力と一口に言っても、殴る蹴るなどの身体的暴力だけではなく、乱暴な言葉遣いで怒鳴る、ものをぶつける/壊す、大きな音を立てて驚かす、状況の定義を一方的におこなって相手の言い分を聞き入れない、無視する、相手をコントロールして束縛しようとする、ふたりのあいだに起こっていることを誰にも言わないよう口止めする、などもれっきとした暴力なのです。
●レズビアンが暴力の被害を届け出る際に直面する問題には、以下のものがあります。
・警察やその他の支援機関がレズビアン当事者のDV被害届を受理するとき、カップルのどちらが実際の被害者なのかわからない場合があります。というのは、暴力を振るっている側が、相手をよりいっそう自分のコントロール下に置く手段として、警察やシェルターに被害を届け出ることがあるからです。
・クローゼットのレズビアンは、自分のセクシュアリティを不特定他者に知られることを怖れるし、クローゼットでなくても、パートナーとの関係が暴力的であることを他人に知られるのを嫌うため、DV被害を訴え出ることをためらうケースがあります。
・非異性愛が違法とされている、もしくは社会的に認知されていない地域や国では、DV被害支援機関やシェルターに届け出ても、ホモフォビアにさらされたり、当事者の立場への無理解によって二次被害を受けることがあります。
●自分がDVの被害に遭っているかどうか確信が持てない場合や、パートナーあるいは自分が、将来DVの加害者になりそうかどうかを見極めたい場合は、現在あなたとパートナーが以下のような言動をはたらいているかどうかが参考になります。
1)嫉妬
暴力を振るう側は、「嫉妬するのは愛している証拠だ」と言います。しかし、嫉妬心は愛情とはなんの関係もありません。それは独占欲や支配欲、信頼感の欠如のあらわれです。
2)相手の生活や行動を管理しようとする
暴力を振るう側は、相手の日々のスケジュールや、今日一日の相手の出来事をすべて把握しようとします。それは、「あなたの生活を管理するのはあなたの身の安全が心配だから」「あなたが時間を有効に使うため」「あなたがよりよい判断をできるようにするため」などと言います。
また、相手を心配するふりをして、「こうしてほしい」「ああしてほしい」と、相手の言動を一方的に修正させようとしたり、相手が合意していないことを勝手にふたりのあいだの約束事にしたり、その約束事を自分から勝手に反故にしたりします。
3)非現実的な期待
暴力を振るう側は、自分が必要とするものすべてをパートナーひとりに満たしてもらおうとします。たとえば、完璧なパートナー、親密に振る舞える友人、甘えたり甘えられたりする姉妹や母娘であることを同時に望みます。また、「あなたには私がいれば充分だし、私にもあなたがいればほかにだれも必要ない」などと言ったりします。
4)隔離
暴力を振るう側は、自分のパートナーが外部とつながることを阻止しようとします。パートナーに親しい友人がいると、「そのひとと浮気をしているのだろう」などと罵ったり、その友人とパートナーが会うことを極度に嫌がり、やめさせようとします。相手の家族や友人を悪く言って、なるべく連絡を取らせないようにすることもあります。
5)浮気をほのめかす
暴力を振るう側は、パートナーの気を引くために、ほかに気になる相手がいることをほのめかすことがあります。テレビや雑誌、街なかで見かけたひとが「きれいだ」「好みだ」などと話題にしたり、パートナーのいる目の前で、ほかのひとに気があるような言動をはたらいたり、パートナーが知りたいと思っていないにもかかわらず、過去に付き合っていた相手の話をえんえんとしたりして、わざとパートナーに焼きもちを妬かせようとします。
6)トラブルはつねに他人のせいにする
暴力を振るう側は、ものごとがうまくいかない原因をつねに他人のせいにします。たとえば、長期にわたって仕事を見つけることができなかったり、ひとつの仕事が長続きせず、すぐに辞めてしまったりする場合、その理由を、「ほかのだれかがいつも台無しにしてしまう」とか「自分のやりたいことをいつもだれかが邪魔する」と言ったりします。
7)気分や言動にムラがある
暴力を振るう側は、その場その場で言うことや気分がコロコロと変わります。最初は機嫌良く振る舞っていたかと思うと、急に顔色を変えて怒りだしたり、突然泣き出してパートナーの許しを請うたりして、暴力のループを循環します。ほかのひととはいつでも冷静に対応できているのなら、そのひとはパートナーとふたりきりのときを選んで気ままに振る舞うのです。パートナーはまるでジェットコースターに乗せられているような心境になります。
8)話の論点をずらす、無視する、話し合いにならない
暴力を振るう側は、相手の質問に直接答えず、論点をずらした返答をすることがあります。また、質問されても黙ったままでなにも答えようとせず、うやむやにして逃げようとします。お互いにケンカの原因をさかのぼって究明しようとした場合、パートナーが実際には言ってないことを「言った」と言い張るなど、相手の言動とそれに対する自分の受け止めかたを区別することができず、事実確認の段階で平行線がつづき、話し合いが話し合いとして機能しません。
9)極論にはしる
暴力を振るう側は、パートナーと言い争ったとき、100%自分が悪いか相手が悪いか、白黒をはっきり決めたがります。そして、どちらが悪いにせよ、「こんなにケンカばかりするなら付き合っていても意味がない」などと別れをほのめかしたり、ストレートに「別れる」「出ていく」「死んでやる」などと言って、相手を困らせたり脅したりします。
10)相手のダメージを認めない
暴力を振るう側は、パートナーとの距離を適正にはかることができません。相手が頼んでいないことを、「あなたのためを思って」自己判断でやり、それをとがめられたり、「頼んでいないよ」と言われると、相手の望まないことをしたにもかかわらず、とがめられたことだけを大げさに嘆いて相手を一方的に非難し、自分は被害者であると周囲に訴え、同情をひこうとします。
その一方で、パートナーが自分に訴えてくる不平や不満を過小評価し、「そんな小さなことで怒るなんてどうかしている」などと言ったりします。また、パートナーが「私はあなたから暴力を受けている」と訴えても、「それは暴力ではない」「私のほうこそ被害者だ」と切り返して、相手が自分の言動によってダメージを受けていることを認めようとしません。
●自分が被害に遭ったらどうすればいいか?
暴力や虐待は、ほうっておけばいつか解決するというものではないことを、まずしっかりと認識しましょう。それとは逆に、多くの暴力や虐待は徐々にエスカレートしていくものです。まずはひとりで悩み沈黙している状況を変えましょう。信頼できるひとに現状を話してみてください。
ただし、相談したつもりが二次被害を受ける場合もあるので、注意が必要です。たとえば、「そんなひとと付き合っているあなたが悪い」などと、相談者を責めるようなことを言うひとに、今後も相談をつづけるべきかどうか、よく考えてみる必要があります。信頼できる相談相手とは、窮地に陥っている当事者に安心感と安全感を提供し、絶対的な味方になってくれるひとのことです。
パートナーとの関係を継続するか打ち切るかにしても、パートナーとある程度距離をとって、自分が安全でいられる環境を整えておくことは重要です(安全でいられる環境とは、身に危険がおよばず、身体的にも精神的にも落ち着いてものごとを考えることができる環境のことです)。たとえば、信頼できる友人や知人に援助を頼んでおいたり、安全に泊まれる場所を確保しておいたり、いざというときのためにある程度の貯蓄をしておいたり、援助が得られる場所の連絡先を調べておいたり、カバンに衣類や下着などの必要な生活用品を詰めていつでも逃げられるようにしておく、などです。
●最後に
DV被害に遭っているひとの大多数が異性間カップルにおける女性であることはよく知られていますが、だからといって、DVは異性間カップルにのみ起こるものと考えるのは、誤った認識です。このプロジェクトが、非異性間カップルにも存在する暴力を注視し、すべての暴力を防止し、なくすための情報源となり、きっかけとなることを切に願います。
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: レズビアンカップルにおけるドメスティック・バイオレンス(DV)
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.delta-g.org/mt/mt-tb.cgi/328

コメントする